第15話 水やりランチタイム ー 寺本聖

 四時限目の授業が終わるや否や私はお弁当を持って中庭にダッシュします。

 そうです。これから待ちに待った小野里先輩と二人きりのランチタイム、、いえ中庭花壇の水やりです。

 そう、あくまでも中庭花壇の水やりの後のに小野里先輩とランチを一緒にするだけなのです。

 勘違いしてはいけません。私は身の程を知っています。


 中庭に着くとまだ小野里先輩は来ていませんでした。

 ランチタイムの時間が長く取れるよう、、ではなく、水やりの作業が効率よく出来るように物置からホースリールを取ってきます。

 ホースリールを出して戻ると小野里先輩がちょうどやって来ました。


「ごめん。パン買いに行ってちょっと遅れた」

「いえ。今ホースを出してきたばかりですから」

「じゃぁ、昼もとっとと終わらせちゃいますか」

「はい」

 水やりは朝やったように小野里先輩とのコンビネーションで進んでいきます。気持ち、朝よりもスムーズに進んでいる気がします。


 ひと通り水やりをやってホースを片付けて待望のランチです。

 朝ごはんを食べた時と同じベンチに座ります。

 小野里先輩のランチは売店で買って来たパンです。いつもお昼は売店でパンを買っているんだと伺いました。お母さんは先輩が産まれてすぐに亡くなったそうです。

 私のお弁当を見て「その弁当も自分で作ったのか?」と先輩に聞かれたので「自分で作って来ました」と答えたら、「今朝のおにぎりといいその弁当といい本当に旨そうな飯を聖は作るな」と言っていただきました。

 私の唯一の取り柄であるご飯作りを褒められるのはとても嬉しいものです。


「来週から先輩の分もお弁当を作って来たら食べていただけますか?」

 嬉しいと思った勢いで言ってしまいました。

 普段の私なら絶対に言えない台詞ですが褒められてちょっと口が軽くなっていました。

「俺の分の昼飯も作って来てくれるのか?」


 先輩が驚いています。そ、そんなに驚かないで下さいよ。

 私、お弁当作りとか不得意に見えるのでしょうかね?

 そして出来れば是非、私に作らせて下さい。先輩が嫌でなければ。


「朝と昼と。私と全く同じお弁当になりますけど、それで良ければ」

「良いに決まってるじゃん。凄ぇ嬉しいよ」

 凄い喜びようです。先輩が喜んでくれてます。

 やりました!


「じゃぁ、水やりのある火曜日と金曜日の朝と昼は私が作って持って来ますね」

「聖の作ってくれるご飯が一日二食も食べられるなんて。あっ、あまりそういうこと言うとプレッシャーになっちゃうかな?」

「いいえ。料理に関してはプレッシャーにはなりません。普通なら謙遜するところなんでしょうけど、ご飯に関しては私の中では特別なので。先輩! 来週からのお弁当、期待してて下さいね」

「おぉ。聖、期待して楽しみにしてるよ」

 夢のような火金に更に楽しみが加わりました。


=====

明日は一話が短めなので昼、午後、夕と三話公開します。

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