第10話 緑化委員会での作戦遂行 ー 小野里拓真
緑化委員会が開かれる生物室は管理棟の一階の奥にある。ここはいつ来ても廊下が暗い。
生物室のドアを開けるが部屋は暗くまだ誰もいない。ちょっと早過ぎたかな。
でも、十分もしないうちに緑化委員が集まって来る。
「小野里先輩も緑化委員なんですか?」
知らない子から、たぶん二年生かな? 声を掛けられた。
「うん、そうなんだ。宜しくね」
「きゃー! 先輩とご一緒できるなんて光栄です」
「私もさっきここに来て先輩がいるのに気が付いて驚きました」
別の子も話の輪に加わって来る。
いつの間にか周りに女子が集まる。ただ、まだあの子の姿は見えない。
その時、開いたままのドアからそっと入って来た生徒が見えた。間違いない! あの子だ。やはり緑化委員に追いやられて来た。
「おーい座れ。緑化委員会始めるぞ」
同時に入って来た先生の声で周りの女子が散っていき皆が着席する。
「まずは委員長を決めてくれ。議事を任せたい」
先生がそう言うとどこからともなく「はい! 委員長は小野里先輩にお願いしたいです」との声。
パチパチパチ。あちこちから拍手が起きる。
「小野里、どうだ? やってくれるか?」
仕方ない。いや、今日は神の恵み。議事進行が出来れば上手く話を進めていける。
「分かりました」
仕方なく引き受けた風を装いつつ俺は黒板の前に立つ。
「本年度の緑化委員長に推薦されました小野里拓真です。どうぞ皆さん宜しくお願いします」
パチパチパチパチ。
「じゃぁ小野里、役割分担を決めてくれ。班はこの四つだ」
先生から渡された紙を読み、黒板に書き出していく。
・校地外周の樹木 月、木 一回/日 各二人
・中庭花壇及び樹木 月木、火金、水 三回/日 各二人
・校舎前プランター 月木、火金、水 三回/日 各二人
・校舎内鉢植え 火、金 一回/日 各二人
こんなもんかな。
まず立候補者を募る。早速何人かの手が上がり校地外周と校舎内から埋まっていく。そりゃそうだ。一日一回と三回では雲泥の差がある。
当然の如く日に三回も水やりをする中庭とプランターは立候補もなく人気がない。が、そこが狙い目だ。
まだ決まっていない人に適当に声を掛けてプランターの担当を決めた。残ったのは中庭だけだ。
「小野里先輩がどの班に入りたいか聞いてませんでしたけど?」
誰かしらから声が掛かる。これは想定内。
「僕は残ったところでいいよ」
これで俺とあの子は中庭花壇の班になった。
「では各班ごとに集まって担当曜日を決めて下さい。決まったら紙に班の担当場所と曜日ごとのメンバー名を書いて持って来て下さい」
各班ごとに集まり始める。
中庭担当の六人が俺のところに集まってくる。あの子が近づいて来たタイミングで席を立ち、意識してさり気なくあの子の隣に並んでみた。
あっ、ちょっとドキッとしてくれたみたい。
「私、小野里先輩と一緒にやりたいです」
二年生と思われる女子が立候補してきた。ゴメン。俺、君の名前も知らないよ。
「私も小野里くんと一緒がいいな」
今度は隣のクラスの三年生。
「あの、私もです」
「私も」
一年生が二人も。皆んな牽制し合ってる。
隣のあの子をちらっと見ると目が逝っちゃってる。心此処にあらずだ。
「先輩! 誰とペアを組むか選んで下さい」
どこの誰か知らないが俺が期待してた言葉を言ってくれた。
ありがとう。俺はその一言が出るのを待っていたんだよ。
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