第8話 緑化委員会での出会い ー 寺本聖
「じゃぁこれで決まりだ。各委員は掲示板を見てそれぞれの委員会会議に参加してくれ。以上で終わる」
担任が教室から出ていきます。
何か知らないうちに緑化委員に決まってしまいました。緑化委員って何するんでしょうか?
そう言えば、さっき担任が掲示板に委員会会議が書いてあって参加しろと言ってたっけ。帰りにでも見て帰りますか。
緑化委員、緑化委員と。あった! えーと、明日! 明日なの? 明日の放課後が緑化委員会になってる。場所は生物室か。まっ、行けばわかりますよね。
昇降口で上履きからローファーに履き替えている時に緑化委員という言葉が耳に入って来ました。さっきまでは全く気にならなかった言葉ですが自分が関わることになった今はとても気になります。
「えー! うっそー! ――先輩が緑化委員。私も緑化委員になればよかった」
先輩? 先輩って誰でしょうか?
翌日の放課後になりました。
昨日、緑化委員に決まったばかりなのに、もう翌日に委員会が開催されるのです。
生物室は管理棟の一階の奥にあります。たしか廊下が暗かった気がします。そうそう、ここです。
「あれ?」
生物室の中から女子の黄色い歓声が聞こえて来ます。廊下の暗さと黄色い声がアンバランスです。それにしてもテンションの高い声ですね。何でしょう? 何が起きてるんでしょうか?
ドアが開いたままの生物室にそっと入ると女子生徒の塊が生物室の一角に出来てきます。
何か人気のお菓子でも配っているんでしょうか? っていうくらいの集まりようです。
後ろから先生が入って来ました。
「おーい座れ。緑化委員会始めるぞ」
女子生徒の塊が
あの拓真先輩が緑化委員ですか! それは女子は群れますね。
納得です。
「まずは委員長を決めてくれ。議事を任せたい」
先生、それ面倒くさいから自分でしたくないからですよね。
「はい! 委員長は小野里先輩にお願いしたいです」
さっそく女子から小野里先輩と言う人を推薦する声が上がります。
それに合わせてパチパチパチとあちこちから拍手が起きます。
「小野里、どうだ? やってくれるか?」
「分かりました」
答えたのは拓真先輩です。
そうですか。拓真先輩のお名前は
いい情報を頂きました。今日一番の収穫です。
小野里先輩が黒板の前に立ちます。
「本年度の緑化委員長に推薦されました小野里拓真です。どうぞ皆さん宜しくお願いします」
パチパチパチパチ。さっきよりも大きな拍手。
勿論、私も大きな拍手をします。
「じゃぁ小野里、役割分担を決めてくれ。班はこの四つだ」
小野里先輩が先生から渡された紙を読み黒板に書き出します。
・校地外周の樹木 月、木 一回/日 各二人
・中庭花壇及び樹木 月木、火金、水 三回/日 各二人
・校舎前プランター 月木、火金、水 三回/日 各二人
・校舎内鉢植え 火、金 一回/日 各二人
さっそく立候補者が出ます。次から次へって感じです。
当然の如く日に三回も水やりをする中庭とプランターは立候補もなく人気がありません。
私が何かを言い出す前に私は中庭花壇の班に入ってしまいました。いや、何も言い出せないまま残ったのがそこだけだったんですけど。
「小野里先輩がどの班に入りたいか聞いてませんでしたけど?」
どこからか先輩に声が掛かかります。
「僕は残ったところでいいよ」
そういう訳で小野里先輩も中庭花壇の班に入ることに決定です。同じ班です! 大事なことなのでもう一度言いますね。小野里先輩と同じ班になりました!
各班ごとに集まって曜日分担を決めることになりました。
中庭花壇の班と思われる人たちが小野里先輩のところに集まってきます。私も遅れないように小野里先輩の近くに向かいます。
私が近づいていったタイミングで小野里先輩が立ち上がり私の右隣に来ます!
近い! 近い! 近い! こんなに近くにいるなんて。
すぐ隣ですよ。心臓に悪いです。
貧血のフリをしてくらっとすれば確実にくっ付きますし、あわよくば抱き抱えてもらえるポジションです。
まあ、そんな姑息な手段は使いませんけどね。すぐに
嘘です。そんな事はしたことも言われた事もありません。そもそも、そんな高等テクニックは副作用に何があるのか分からないので私のような未熟者は怖くて使えません。
でも、もしかしたら今後は小野里先輩とお話しする機会があったりするのでしょうか。
上手くしたら名前くらいは覚えてもらえて廊下ですれ違った時に『おっす! 寺本!』とか声掛けられたりするのでしょうか!
『寺本さん、小野里先輩と知り合いなの?』とかクラスメイトに聞かれて『普通に挨拶交わすとか雑談が出来る程度の知り合いなだけだよ。恋バナくらいまではオーケーかな』とか言ったりして!
きゃー! 想像しただけで赤面しそうです。
クラスの皆んな! 緑化委員にしてくれてありがとうございます。最高です!
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