第5話
女刑事物語(5-1)
翌日、ユリは午前中に出かけるようだった。ジーンズにスタジャン、ニットの帽子とミトンにマフラーの、前日とはうって変わったティーンズのスタイルだった。赤いリボンのついた小さな包みを手にしていた。
「どこへ行くの。」 凜が問いかけた。
「あなたには関係無いわ。」 ユリは答えたが言葉のとげとげしさはいくらか和らいでいた。
「ついて行くからね。」 と凜は念を押した。
外へ出て少し歩くとユリがいきなり凜を振り返って言った。
「もう少し離れてくれないかしら。まったくお笑いだわ。」
「えっ?」
「脅迫状だなんて。そんな間抜けな犯罪者はアメリカにはいないわ。そんなヒマがあったら彼らはトットとやるべき事をやるわよ。バカバカしいったら無いわ。」
内心、もっともな意見だと凜は思った。だが閑静な住宅街を歩きながら首筋にピリピリと緊張感が走るのを覚えた。それは事件現場に初めて足を踏み入れる感覚と似ていた。
資産家の娘が一人で歩いている。身代金目的の誘拐を企む犯罪者グループがいたならば、それはいとも簡単に成功してしまうだろうと思われた。ユリはあまりに無防備すぎる。なぜ車を用意しなかったのか。ウメはなぜ無関心だったのか。そして自分は状況を甘く見ていたのか。だが一方で誘拐事件が発生する可能性は極端に低いと考えられるのも事実だった。
もし万が一…凜は犯罪者が接近した場合のシチュエーションを思い描いた。ユリを逃げ込ませる所を意識しながら歩いた。
やがて遙か前方の道路のたたずまいに見覚えがあると気づいた。明と初めて出会ったあたりだ。美風の保育園の近くだ。すると自宅と明の家はそう遠くないという事になる。ユリが角を曲がって姿を消した。
「そうだ、あの通りを彼が歩いていてその先のT字路で出会ったのだわ。」
凜が後に続くと思いがけずユリが心細そうに立ち止まっていた。凜が現れるのを待っていたようだ。凜に気づくとくるりと背を向けて何事もなかったようにまた歩き出した。凜は不意にユリを愛おしく感じた。
「あなたを守ってみせるわ。」 そう口の中で呟いた。
保育園が近づいた。ひょっとすると美風の姿が見られるかもしれないと期待して歩いた。
保育園を通りすぎるとばかり思っていたユリが門をスライドさせて園内に入った。凜は意外だったが、しかし明も同じようにこの保育園を訪れたのだと気づいた。明とユリは保育園と特別な関係にあるのかも知れないと漠然と考えた。
ユリは園長に会いに来たのだった。
「あいにく只今来客中です。」 と保育士が伝えた。
「…いいの、全然急いでいませんから。」
保育士とユリは微笑を交した。互いに見知っているようだった。
凜は美風の姿を認めていた。園庭と建物の間に屋根付きの通路が設けられていて、そこに十数人の園児がかたまっていた。冷たい風のせいか皆頬を赤くしたその輪の中で美風が盛んに何か話している。
「美風。」 と小さな声で呼び掛けたがまったく気づかない。
ユリが訝しげな視線を凜に向けた。
「美風。」 と今度はやや大きな声を上げた。
一人の園児が顔を向けた。すぐに 「美風ちゃんのママだ。」 と指差した。
美風がすっくと体を起こして確かめるように見た。次の瞬間 「ママッ。」 と叫んで走り出した。凜の下腹部のあたりに飛び込んだ。
「美風ッ。」 反動で倒れそうになった娘を慌てて掴んだ。美風は凜のスカートを握りしめて母親を仰ぎ見た。少しの間があって 「お迎えなの?」 と聞いた。疑問の響きが強かった。何しろ登園したばかりだったのだ。
「違います。」
凜の答えを反芻しながら美風は期待に顔を輝かせた。
「じゃあ、後で一緒に帰るのね。ママと一緒に…。」
「ご免なさい美風、ママはお仕事なの。」
美風は衝撃を受けていた。母が保育園に来るときは仕事が終わったということだった。そう理解していた。だが今日は違うという。
「ママ…。」
「なあに?」
「ママ…。」 美風は言葉を失っていた。しかしやっと語るべき事を思いついた。
「ママ、明日公園に行こう? ゾウさんの公園だよ。」
「ゾウさんの?」
「ゾウさんのすべり台が出来たの。」 美風は手でゾウの鼻をなぞる仕草をみせた。 「すっごく大きいんだから。」
「ご免ね、ママ明日もお仕事なの。」
美風が苛立ちをみせた。いつも一緒にいられるとは限らない母。その母が今目の前にいるにもかかわらず、自分の望みが何一つ叶えられないと知って癇癪を起こしていた。片足で強く地面を踏んだ。くるりと凜に背を向けた。もう片方の足でドシンと地面を踏むと 「ママはお仕事ばっかり…。」 と呟いた。そして次の瞬間、美風は力の限りに叫んだ。
「ママはお仕事ばっかり!ママはお仕事ばっかり!ママはお仕事ばっかり!」
「美風…。」 今度は凜が言葉を失っていた。
いつの間にかユリが側にいた。凜が結婚して娘がいることを察知し、心のどこかに安堵を覚えていた。軽い気持ちがユリの唇を動かした。
「あら、娘さんに嫌われちゃったのかしら?」
そして美風に声をかけた。
「美風ちゃん。」 今聞き知ったばかりの名だった。 「公園にはパパと行けばいいわ。ママはどうせお仕事ばっかりなんだから。」
美風は動きを止めていた。身じろぎもせずユリを見上げていた。
「えっ?…。」ユリは浮かべていた曖昧な微笑を消した。
「美風にパパがいるの?…。」
「えっ?」
美風は戸惑うユリを見つめていた。ユリはハッとして握った手を自分の口に押し当てた。
「美風にパパがいるの?」
ユリは泣き出しそうな顔になった。
美風は凜に走り寄った。
「美風にパパがいるの?」
凜は膝をついて娘の衣服を整えながら答えた。
「美風にパパはいないわ。」 娘と眼を合わせなかった。
美風は安心したようだった。
「美風にパパはいないわ。」 とユリに言った。
離れたところから保育士が大きな声で美風を呼んだ。
「今から絵本を読むわよ。中に入ろう。」
「うんっ。」 美風はその場を走り去った。
ユリは立ち尽くしていた。それからやっと 「ああ、ご免なさい…。」 と絞り出すように呟いた。
凜は膝に付いた砂を払いながら 「あなたが謝る必要はないわ。」 と言った。
ユリが鋭い眼で凜を睨んだ。凜はユリが自分に詫びた訳ではないと気づいた。
「どうなのかしら。」 とユリは強い口調で言った。
「パパはいないなんて、どうしてそんなことが言えるのかしら。」
短い沈黙の後に凜が小さな声で言った。
「あの子にパパと呼べる家族はいないわ。」
「そうなの?」 ユリは間髪を入れずに切り返した。
「パパと呼べる家族はいないの? どうして?」
凜は彼女が何を考えているのか分る気がした。はたしてユリが激しい口調で決めつけた。
「あなたの身勝手でしょう。親の勝手だわ。それを差し置いてよくあんな事が言えたものね。子供のことなど考えていないのよ。子供がどんなに寂しくつらい思いをしなければならないか知ろうともしないのよ。」
凜は一言も反駁しなかった。
「私もそうだったわ。両親が離婚するのを私は望んでなどいなかった。でもそれを受け入れるしかなかった。パパと離れて暮らす事など少しも望んでいなかった。でもそれも受け入れるしかなかった。他に私に何が出来たかしら。…ママが再婚したわ。ママの幸せを願ってはいたけどそのとき私が望んだ訳ではなかった。弟が出来たわ。私は心の底で思った。私が望んでいたことかしら。…全て黙って受け入れるしかなかった。ただ受け入れるしかなかったのよ。」
ユリは突然黙り込んだ。母の再婚を口にした事で自己嫌悪を感じていた。もう一言も喋るまい。しかし理性を越えて感情が高まるのを押さえられなかった。父親の存在すら知らない美風の姿がユリの心を激しく揺さぶった。
「親はすぐに自分の身勝手を忘れるわ。でも子供はずっとつらい思いをしなければならないのよ。」
沈黙していた凜が静かに口を開いた。
「離婚したのは娘がまだ一歳のときだったわ。たしかに身勝手だといえばそうかも知れない。でもその事を忘れようとするわ。前に進まなければならないのよ。それから…子供に詫びようという気もないわ。それは仕方のないことだったのよ。けれど我が子に対する負い目を感じて生きていくことになるわ。」
「オイメ? そんな日本語、初めて聞く…。」
「子供が寂しさや悲しみの感情にとらわれていると気づいたとき、それは全部親のせいだと自分を責めるわ。娘はもうすぐ小学生、その前に全てを聞かせるつもり。娘はきっとつらい思いをするわ。そして私を憎むかも知れない。私はひそかに自分を責め続けるわ。…あなたのお父様もそんな負い目を抱いて生きて来たはずよ。」
「パパが?」
「それが親というものなのよ。」
二人はしばらく黙っていた。園児たちの声が建物から漏れ聞こえていた。凜がユリの顔を正面から見てはっきりした口調で話しかけた。
「ユリ。」 呼び捨てだった。ユリは一瞬ドキリとした。
「ユリ、もうあなたの不幸な少女ごっこは終わりにしなさい。」
「何ですって。」
「あ、ご免。…でもねユリ、あなたはもうすぐ大人よ。いや、もう大人だわ。これからは自分が望んでもいないことを受け入れる必要はないのよ。そんなものは拒否すればいいわ。そしてあなたは自分が望むものだけを受け入れて手に入れていけばいいのよ。ユリ、私が言いたいことは分るよね。」
ユリは黙ったまま、頷くべきか迷った。
「私は娘のために出来るだけのことをするつもり。あの子が自分の足で歩ける大人になるまでどんな事にも耐えるわ。あの子のためなら…。」
凜は大きく息を継いで穏やかに続けた。
「ユリ、あなたは大人。目の前にはもう輝かしい人生が姿をみせているはずよ。それを感じているはずよ。もうあなたはちっとも不幸じゃない、そうよね。」
ユリは凜の顔を見つめた。凜はゆっくりと微笑を浮かべた。“母”を感じさせる優しい表情だった。ユリは慌てて眼を逸らせた。
「あなたには希望や目標があるはずよ。実現させたい夢とかね。」
ユリは顔を背けたまま黙っていたが凜は構わず続けた。
「ねえ、それをお父様に話してあげたら? つまり宣言するのよ。」
「宣言?」
「そう、これからは自分の望むものだけを受け入れていく、自分で決める、私はもう大人ですと表明するの。きっとお父様はビックリするわ。そして安心するわ。…ユリ、お父様を負い目から解放してあげて。あなたにはそれが出来るわ。」
ユリが考え込む様子を見せると凜は優しく声をかけた。
「あなたの力強さを知ったらとても嬉しく感じるはずよ。…あの人きっと喜ぶわ。」
言い終わると凜は門の方に歩き出した。外の様子を調べたいと思ったのである。
ユリは父親のことを考えていた。
「…パパが負い目というプレッシャーを受ける必要なんかどこにもないわ。パパが悪いわけじゃない。彼女が言ったとおり離婚は多分、仕方のないことだったのよ。」
そして凜の言葉が心に残っていた。
「パパを負い目から解放してあげて、彼女はそう言ったわ。私がパパの心を救うことが出来ると教えてくれたのかしら。」
ユリは気分が高揚するのを感じた。自分が父親のために何か出来ると初めて意識することが出来た。
「ああ、なぜもっと早く気づかなかったの。もしかすると私は無意識にパパへ贖罪を求めていたのかしら。…でも、もう過去を振り返らない。パパ、あなたの娘ユリは、やっとパパの所へたどり着くのかも知れない。パパ、私の力強い姿をきっと見せてあげるわ。」
ユリは凜の言葉を素直に受け入れている自分に気づいた。そしてなぜか気になった凜の一言をよみがえらせていた。…あの人、きっと喜ぶわ、そう言ったわ。 「あの人?」 ユリは繰り返した。そして門の外にいる凜の横顔をジッと見つめた。
凜はユリの用事が済むのを外の道路で待っていた。自分の姿を美風に見せたくなかった。母を見て再び不安定な気持ちになるのを恐れたのだ。
しばらくして門のあたりで園長の声がした。凜は急いで近づいた。挨拶するためだ。互いに笑顔で型どおりの挨拶を交した。
それから園長がユリに別れの言葉を言った。
「健康に気をつけてね。また来年会いましょう。あなたに頂いた人形、大事に机の上に飾っておくわ。そして毎朝私がグッドモーニングと呼び掛けていることを忘れないでね。」
ユリは園長の手を握って何度も頷いた。それではと別れかけたところで急にユリが大きな声を出した。
「あっ先生、待って。」
園長は穏やかにユリを見まもっている。
「私のニックネームのことなんだけど。」
「ニックネーム?」
「そう、保育園でのニックネーム…。」
園長は思い当たるものが無いようだった。困った微笑を向けた。
「無敵のユリって呼ばれてたと思うけど。」
その瞬間、園長は眼を大きく見開いた。
「そう、そうよ。無敵のユリ、それがあなたのニックネーム。…ああ懐かしいわ。十数年ぶりにその名を聞いたわ。」
「先生、私不思議だったの。なぜあんなニックネームが付いたのかしら。」
「あら、あなた忘れたの?まあ…。」 園長は楽しそうな笑顔を作った。 「ほら、犬が入って来たという事件があったでしょう?」
「犬? …あっ!」
園長はユリが突然に思い出したと気づいて凜に説明した。大きな犬が園に入って来たのだった。
「私は先生たちから後で聞いたのですが、子供たちはすっかり怯えて隅に固まっていたそうです。先生方がこれに気づいてすぐに駆けつけたのですが、そのときユリちゃんが子供用のバケツを持って犬に近づき水をかけようとしたそうです。犬は水を避けたのですが、ユリちゃんは次の瞬間にバケツを投げつけ、驚いた犬は出て行きました。すると一人の男の子が“ユリは無敵だ”と叫んだというのです。その男の子は無敵という言葉を知っていたんですね。」 園長はユリを見た。 「つまりそれがあなたのニックネームになったというわけ。」
園長はまたユリの手をとった。
「ああ、あの頃のあなたを思い出すわ…。」
園からの帰途、凜とユリはいつのまにか並んで歩いていた。
「園長先生と親しいのね。」
「園長先生はパパの小学校の先生なの。パパが生まれてすぐにパパのママは亡くなったのよ。だから子供の頃パパは寂しかったわけ。でも小学校で園長先生にとても優しくされてうれしかったと言ってたわ。ママが出来たようだったって。だから園長先生はパパのママ。ということは私のグランマなの。」
それからおかしそうに続けた。
「だから人形に…私、手作りの人形をプレゼントしたの。服に小さくGMと文字を入れたわ。勿論グランマの意味で。でも先生は “あら、ジェネラルモータースのTシャツを着てるのね”だって。ビックリよ。時々そういうところがあるのよ先生は。笑ってしまったけど、先生ちっとも気づかないの。そして毎朝声をかけるって、さっきと同じことをおっしゃったわ。私は咄嗟にその方が素敵だと感じて何も訂正しなかったわ。きっと罪よね。でも申し訳ないけどおかしくって…。」
ユリは凜の反応を確かめようと顔をのぞき込んだが、急に赤くなって眼をそらすといきなり足早に歩き始めた。いつの間にか凜と親しく話している自分に気づいて驚いていた。それまでの態度を思うと気恥ずかしくて堪らなくなったのだ。あっという間に凜との距離が広がった。
翌朝、明とユリはこの日の夕食をどうするかを話し合った。ユリが外出はしたくないと言い出したのだ。
「ここのダイニングはレストランより立派で、何より落ち着くわ。」
「だがウメさんに負担をかけることになる。何しろユリは昨日もディナーをキャンセルしたんだからね…。」
「私は今日パパにお話があるの。静かな場所が必要だわ。」
「話って、どんな?」
「そのとき話すわ。ゆっくり聞いて欲しいことがあるの。」
「パパは今夜、ユリに和食を堪能してもらおうと楽しみにしていたんだが。」
「ご免なさい。」
明が未練がましく言った。
「良い店なんだが…。ユリ、パパはユリを皆に見せたいんだ。そして自慢したいんだよ。」
「次はきっとパパの望むとおりにするわ。でも今日はユリのお願いを聞いて欲しいの。」
ユリは考えを変える気はまったく無いようだった。明はため息をついた。
「それでは料理はどうする。何もかもウメさんという訳にはいくまい。」
「デリバリーで良いと思うんだけど。」
「よし、すし職人に来てもらおう。」
「ダメよ。」
「えっ、どうして?」
「今日は日本で最後の夜よ。私はドレスアップするわ。だからお醤油はNGよ。」
明は両手を広げた。 「何が食べたいか教えてくれないか。」
「えっと…、天ぷらがいいわ。」
明は顔を輝かせた。 「よし、天ぷら職人を呼ぼう。」
「パパ…、やっぱりいいわ。」
「ユリ、いったいどういうことかな?」
「今日は見知らぬ人がいるとイヤなの。」
すると突然ウメの声がした。
「旦那様。天ぷらでしたらウメがご用意いたします。」
「えっ、しかし…。」 天ぷらは思うほど簡単なものではない。明は躊躇したがユリは喜んだ。
「うれしいわウメさん。ああ私もやってみたい。ドレスはやめて一緒に天ぷらを揚げようかしら。」
「それはなりませんよお嬢様。お嬢様は主人公です。でんと構えていてくださらないと。」
「分ったわ。でも、お鍋の中でどうなっているのかしら。きっと、浮いたり沈んだりするのかしら。」
「お嬢様、次の機会には是非ご一緒にいたしましょう。」
「有り難うウメさん。」
ユリがうれしそうにウメに抱きついた。小柄なウメはよろけながらも 「まあまあ、まあまあ。」 と明るい大きな声を上げた。
ユリは表情をそのままに明を振り向いて言った。
「それからあの人にも一緒にいてもらいたいの。」
「あの人? 園長先生かな?」
「いいえ、朝倉さんよ。」
「えっ?」
「警察の人。…あの人ファーストネームは何と仰有るのかしら?」
「凜。彼女と一緒に?」
「あら、ファーストネームをご存知だったの。」
明は不意を突かれた気がした。 「たしか名刺をもらったはずだ…。」 と意味のないことを口にした。
(つづく)
「女刑事物語」(5-2)
凜は明に乞われて鮎川家の夕食に同席することになった。ユリの希望だと説明を受けた。
明が出かけたあと、凜は居間のソファーにユリと向かい合って腰を下ろしていた。
「何か理由があるのかしら。」 と凜が尋ねた。
「あるわ。」 ユリは眼を逸らせたままで答えた。だがその後、何も語らない。凜はユリの逡巡を感じて沈黙を守った。
やがてユリは凜と眼を合わせると 「あなたは…」 と口を開いた。少し言いよどんだ後 「凜さんは」 と言い直した。
「凜さんは私に言ったわ…。」
ユリはすぐに凜の表情の変化に気づいて言った。 「えっ、どうしたの?」 凜は眼を丸くしていた。
「いや、あなたに突然名前を呼ばれたから…。」
「あら、私は礼儀正しくしているつもりよ。私の場合は呼び捨てにされたんだから。」
「えっ?」
「凜さんは保育園で突然私をユリって呼んだわ。びっくりしたわ。」
「気に障ったの?」
「…さあ、どうだったかしら。でもどうして? どうして急に呼び捨てだったのかしら。」
「俺は…ゴホッ、」 凜ののどに何か引っ掛かったようだ。 「私は、あのときあなたを好きになったの。」
ユリは呆然と凜を見つめた。
「ユリはあのとき美風に詫びてくれたのよね。そうでしょう。私は思ったわ。ユリは自分の心に正直な真っ直ぐな娘だって。私は自分が単純だから同じような単純な人が好きなのよ。」
ユリはあきれた顔をして言った。
「なんだかうれしいような、ちっともそうじゃないような気分よ。」
「それで? 話の続きは?」
ユリは肩をすくめた。
「凜さんは、力強い姿をパパに見せてあげなさいと言ったわ。私が望んでいるものをはっきりと口にして、私の決意を示すことでそれが出来ると。だから私は今日、そうするつもり。凜さんにはそれをサポートして欲しいの。」
「なるほど。ではその前にあなたのその決意を今ここで、お父様に話すつもりで私に聞かせてちょうだい。」
「分ったわ。…私は小説家になりたいの。」 ユリは宣言したつもりだったが凜が少しも納得していないと感じて 「絶対になるつもり。」 と慌てて付け足した。だが凜が満足していないのは明らかだった。
「それで終わりなの?」
「だって、望んでいることをはっきり口にしてって…。」
「ユリ、悪いけどあなたの決意が感じられないわ。」
「難しいわ…。」
「ユリ、あなたは今、自分の夢を口にしただけよ。ただの夢としか聞こえないわ。」
ユリは唇を噛んで凜を見つめた。
「小説家になりたいというのはつい最近思ったことなの? それとも随分前から?」
「ずっと前から、もしそうなれたらって思っていたわ。」
「じゃあその為に自分が何をしなければならないかという事も当然考えてきたはずよ。」
ユリは無言で頷いた。
「さあ、それを聞かせて。」
「…私はヨーロッパの近世の歴史を勉強しなければならないわ。そしてヨーロッパの国々の王室について研究する必要があるの。なぜなら私の書きたい物語の舞台はヨーロッパのある国の王室。そしてその時代。歴史の激しい流れの中で王女である私のヒロインは運命的な試練に立ち向かうわ。…ヨーロッパには数々の王国があったはずよ。そして今もいくつかの国では王室が受け継がれている反面、歴史の中に消え去り滅んだ王室もある。私はそれを研究したいの。王室の存続と滅亡を分けたのは一体何だったのか。興味は尽き無いわ。だから大学で勉強するの。私は、価値観が目まぐるしく変わる時代にあっても毅然として生き抜くプリンセスを描きたい。そしてその事できっと何かを証明してみせるわ。…それが何か今はうまく言えないけど、必ず成し遂げるわ。凜さん、これが私の決意。自分でも初めて言葉にしたんだけど…。」
凜が弾んだ声を上げた。 「ユリ、素敵だわ。あなたの意欲と決意が伝わって来たわ。」
「本当に?」 ユリは思わず立ち上がっていた。 「パパは私の成長を感じてくれるかしら。」
「きっと喜ぶわ。」
「おおッ。」 ユリは感極まった声を上げ、両手を組んで天井をみあげた。
凜は微笑を浮かべてユリを見ていたが、やがて 「ユリの“物語”の着想はどこからうまれたの?」 と尋ねた。 「なんだか壮大なドラマを予感させるわ。ユリは素晴らしいインスピレーションの持ち主なのね。」
ユリは顔を赤くしていた。
「そんなんじゃ無いわ。」 少しの間を置いて続けた。
「…小学生の頃、私は自分がどこかの小さな国の王女なんだって空想して遊んでいたの。パパには言えないけど、アメリカに移ってからは一人ぼっちだったわ。小学校では言葉は分らないし、私と一緒にいてくれる子は誰もいなかった。意地悪な子は沢山いたけどね。だから私は空想の世界に一人で遊んでいたというわけ。
私はヨーロッパの小さな国の王女。両親、つまり王様とお后様は悪い大臣に毒を飲まされて、体を悪くして牢に閉じ込められていた。そして大臣は私をアメリカへ追放したのよ。国は大臣に乗っ取られてしまった。けれど私は必ず彼を懲らしめてやると決意していたわ。
そこへ隣国の王子様が現れるの。その美しい王子様とはかつて舞踏会で会ったことがあるのよ。彼はアメリカに留学してきたというわけ。私の物語の中でも一番のお気に入りのシーンだわ。王子様と私をクラスメイトや近所の人たちが取り囲んで注目しているの。そこで王子様は私に跪いて “ユリ王女様、またお会いできて光栄です。” と礼を尽くすの。私が “悪い大臣を懲らしめて国を取り戻さなくてはなりません、どうか力をお貸しください” と言うと、彼は私の手をとって “お望みのままに” とキスをするの。」
ユリは恥ずかしそうに凜を見た。凜は黙って頷いた。ユリが愛おしかった。幼い “無敵のユリ“ はアメリカでも闘っていたのだと知った。
「英語で聴いたり喋れるようになると友達が増えていったわ。王女様ごっこはめったにしなくなったけど、あの頃の私を孤独から救ってくれた空想の世界を忘れてしまうことはなかったわ。
ジュニアハイスクールの頃になって、私の空想上の王国に何か具体的で真実味のある飾り付けをしたくなったの。その為にはモデルが必要だと考えた。ヨーロッパの王国やその王室を調べたわ。そして知識を手に入れたつもり。断片的だけど…。
王室も様々だわ。王室の間で友好的に関係を深める場合もあれば、激しく対立して戦争に至ったこともあった。経済的に豊かな王室があればその逆も。王室が借金を重ねて、ついには国民の税金がその利息に消えてしまうという国があったのよ。一方で豊かな王室は信じられないほど立派な宮殿を建てて贅を尽くした生活をおくったわ。」
凜は不意に借金だらけの王室に興味を持った。
「そのすごい借金をしちゃった国はどうなったのかしら。」
「ついに国王が宣言したのよ。もう借金を返すつもりはないって。」
「えっ? それじゃお金を貸していた人たちは?」
「当時ヨーロッパの富豪といわれたドイツの商人だったけど、お金を返して貰えなくなって、多分没落してしまったと思うわ。」
「あまり楽しくない話ね。その王室はそれからどうなったの。」
「その後二百年以上王政は続いたけど、その歴史はあまりに複雑だわ。そしてついに内戦が起こり、長い戦いの後独裁者が生まれてしまったの。」
ユリは静かに首を振った。
凜が何かを言いかけたがユリはそれを制して続けた。
「私の知識はまだあまりにも足らないわ。もっと勉強しなければ、そして真剣に研究しなければこのデリケートな面を持つテーマをこれ以上語ることは出来ないわ。」
凜はユリが聡明な娘だと感じた。同じ年頃の自分の高校生時代を思い出してみた。インターハイを目指して必死に取り組んだ柔道、それ以外はほとんど思い浮かばなかった。
…やっぱり私の方がずいぶんと単純だわ、と妙なところで納得した。
「もう一つ…。」 とユリが言った。凜を見ながら迷っていた。
「えっ、なに?」
ユリはうつむいた。 「ほら…」 と眼を伏せて続けた。 「あの服なんだけど…。」
「どの服?」
「ほら、凜さんと初めて会ったときに着ていた服のこと。」
ユリはきまり悪そうに凜を見た。
「私と会ったとき着ていた服?」
凜は記憶をたぐっていた。
「違うッ、凜さんが着ていた服。」
「ああ、あの服? それがどうかしたの。」
「今日はあの服を凜さんに着てもらいたいの。」
「えっ、どうして?」 凜はユリの意図が分らなかった。 「また私をひっぱたくつもり?」
「凜さんッ。」
ユリは顔を真っ赤にして立ち上がったが、同じくらいの早さでまた腰を下ろした。
「あの時のことは謝るわ。だって凜さんのこと何も知らなかったんだから。でもあの服すごく似合ってて凜さんとても美しかったわ。ね、また着て貰えるでしょう?」
「ええ、いいけど。」
「決まりねッ。」 ユリは満足そうだった。
午後になって、二人揃って着替えにかかった。下着姿を互いに見やって楽しそうに小さく笑いを交した。まるで同じ年頃の親しい友人の雰囲気だった。
ピンクのドレスを手にしたユリが言った。
「凜さん。エアコンが効いてるから上着は要らないと思うわ。あのドレス肩が見えているところがチャーミングなのよ。私もノースリーブ。パパ、きっと眼のやり場に困るんじゃないかしら。」 そしていたずらっぽく笑った。
凜はこの期に及んでもユリが何を考えているのか図りかねていた。
帰宅した明は二人を見て大きく両手を広げた。
「まるで美しい花園に来たようだ。」
「お帰りなさい、パパ。」 ユリが頬にキスをした。
「ああユリ、まるでお姫様のようだ。とてもよく似合ってるよ。」 優しい微笑が浮かんでいた。
明は視線を凜に送った。凜はやや離れたところで恥ずかしそうにうつむいた。まるで十歳ほども若く見える。明は眼が外せなかった。
ユリが父親に声をかけた。
「パパ、どこかに座って。そして私の話を聴いてちょうだい。」
練習の甲斐があったらしくユリの話は明を感激させた。軽い興奮が明を包んでいた。
「ユリ、何と素晴らしい計画だ。約束する、パパは百パーセント協力させてもらうよ。まずはヨーロッパへ留学だね。パパに任せなさい。」
「待って。まずはアメリカで基礎的なことを勉強したいわ。今ヨーロッパへ行っても時間をロスしそうな気がするわ。それに入学する大学はもうほぼ決まってるの。」
「ユリ…、ユリは相当頑張ったんだね。」
「大学の先生たちとは何度も面談して私の意欲を伝えたわ。あと学校から求められているのはボランティア活動のレポートだけ。私はアメリカで勉強するわ。」
「勿論ユリの望むようにしておくれ。」
明はユリの手を握って、大学進学が実現する見通しが立っているらしいことを喜び、どこか眩しそうにユリを見ていたが、ふとその表情を曇らせた。
「でも…、ユリの研究が政治思想やナショナリズムと摩擦を起こす恐れはないのだろうね。」 明は父親らしい心配を抱いたのだ。
「ユリ…、世の中にはいろいろな人がいる。全ての人が理論的な行動をとるとは限らないんだよ。」
「心配しないで。私は慎重に行動するつもりよ。」
「そうは言っても…。」
「パパ、ナショナリズムがやがては克服されるべきだという考えは正しくないわ。それは私たちの新しい大統領をみれば分ることよ。ナショナリズムは常に配慮されなければならないわ。プライドを持たずに生きている人はいない、私はその事を決して忘れないつもりよ。」
明はまじまじとユリを見つめた。
「ユリ、君はいつの間にそんなに思慮深くなったのかね。おお、ユリ。君はどんどん成長して大人になっていくんだね。パパはうれしいよ。でもユリ、私から遠く離れていってしまうことはないだろうね。」
ユリと凜は素早く顔を見合わせた。明の気持ちが二人の意図しない方向に向かっていきそうだった。
「パパッ、私の心の中にはいつもパパがいるわ。」 ユリは慌てて叫んだ。
だが明から憂いの表情は消えなかった。
「つまらないことを口にしてしまったね。済まない。けれど言いたくは無いが明日にはユリはアメリカに行ってしまう…。」
「パパご免なさい。これから二週間はクリスマスの準備で大忙しよ。私だけ日本にいる訳にはいかないわ。」 そしてユリは目を伏せて続けた。「…私はママと、アメリカの家族を大事にしたいの。」
「済まない、ユリ。パパは君を困らせることばかり言ってるね。」
ユリは涙に潤んだ瞳で父を見つめた。それから気を取り直した様子で明るく告げた。
「パパ、来年の夏は長く日本にいるつもりよ。そうね…一ヶ月くらいかな。」
明の顔が輝いた。両手を広げてユリに近づいた。
「おお、それは本当かい?」
「ええ、覚悟してちょうだい。」
「ユリッ、何という素晴らしいニュースだ。」 明は大声でユリを抱きしめた。「ちょっ、ちょっと、 パパ…。」 ユリが苦しそうな声を上げた。
明は興奮していた。
「よ~し、そのときパパはユリとずっと一緒にいるよ。…そうだクルージングがいい。ゆっくりと各地の観光を楽しもう。」 そこまで言ってから突然何かを思いついたようだった。 「ヨーロッパへ行こう。」 と言い直した。
「えっ?」
「ヨーロッパさ。二週間ほどかけて各地を訪ねよう。ユリの新しい学問の出発を飾るのにふさわしいと思わないかい?」
「ああ、パパ、素敵だわ。」
「よし、決まりだ。」 明はガッツポーズに似た仕草をした。
「ユリ、早速…いや、クリスマスが終わってからでいいんだが、目的地をリストアップしてくれ。すぐに予約を手配するから。」
「でもパパはそんなに時間がとれるのかしら?」
「大丈夫だ。全て樋口君に任せよう。なにしろ彼女は社長連中から “副会長” と陰口されているくらいだからな。」
「樋口さんカッコいい。」 ユリは手を叩いて喜んだ。
二人は満足げに顔を見合わせた。明はすでに娘とヨーロッパを旅するさまを思い描いているのか顔が綻んでいた。
ユリは立ち上がるとダイニングのドアを開けて大声でウメを呼んだ。テーブルの上は準備が終わろうとしていた。夜八時までをカバーしている中年の家政婦が箸を並べていた。ウメは 「はいはい、はいはい。」 とキッチンから忙しそうにやって来た。
「ご免なさい、写真をお願いしたくて。」
「ええ、ええ。宜しいですとも。」
ユリを真ん中に凜と明が左右に並んでソファーに座った。ウメはユリの携帯を手に、急いで老眼鏡をかけた。
「ユリお嬢様、とってもお幸せなご様子でございます。」
シャッターを押すと、ウメは来たときと同じ急ぎ足で去った。凜はユリが着替えを求めたのはこのためだったと考えた。
「ユリ、撮ってあげるわ。」 凜が手を伸ばして携帯を受け取った。画面をのぞき込むとウメが口にしたとおり幸せそうな父娘の姿があった。凜は自分も明るい気分になっていた。
するとユリが突然 「さあ、今度は私が撮ってあげるわ。」 と立ち上がった。驚いた凜は思わず明を見た。ユリは画面の凜の横顔を見つめた。同性でありながらその美しさに眼が放せなくなりそうだった。
ユリは心に呟いた。 “パパ、お気の毒様、パパに勝ち目は無くってよ。”
「パパ、もっと近寄ってちょうだい。」
明が思いきって凜のすぐ隣に身を移した。肩が触れあった。凜は眼を丸くして背筋を一杯に伸ばし、銅像のように体を硬直させていた。
「リラックスして。そして笑顔じゃないとだめよ。さあ、写すわよ。」 ユリの声には悪戯っぽい響きが感じられた。
空港のターミナルにジェット機のエンジン音が絶え間なく響いていた。
「パパ、元気でね。」
ユリの笑顔の唇の端が震えて、歪んだ。
「ユリも元気で。」
二人は見つめ合った。ユリの眼が潤んでいる。
「またすぐ会えるさ。」 明が言うと、ユリは頷いた。 「さよなら。」 と小さく手を振った。それから、少し離れていた凜に歩み寄ると、手をとって耳元に顔を近づけた。
「パパをよろしくね。」 と小声で言った。
凜がハッとしてユリの顔を見ようとしたが、ユリは足早にドアを通り抜けていく。駐機場に向かうバスが待っていた。ユリが乗り込むのが垣間見えた。そのバスが視界から去ったときが父と娘の別れだった。ジェット機の騒音の中で、明は放心したように無言で佇んでいた。
やがて明はいたわりをこめた凜の視線に気づいて力なく笑った。
「まるで台風が去ったみたい…。」 凜が独り言のように呟いた。
「あなたには…凜さんには大変お世話を掛けてしまいました。失礼なこともあったと思います。」 明は申し訳なさそうに頭を下げた。
「とんでもありません。」
「凜さん、よかったら近いうちに食事を付き合ってください。電話をさせて頂きます。」
「はい、分りました。」 凜は事務的な調子で答えた。明がユリと別れた寂しさを引きずっているのに気づいていたからだ。凜の胸がドキドキしたのはしばらく経ってからだった。
凜は明と二人で高級なレストランにいた。ロココ調の豪華なソファーに並んで座っている。眼の前の長方形のテーブルには見たこともない贅沢な料理が所狭しと並んでいる。テーブルの両端にキャンドルスタンドがあって蝋燭が数本立ち並んでいる。壁にもキャンドルが架けられていて、照明はそれだけだった。
隣の明の顔を振り向いたが、暗くてよく見えない。その明が凜の体に回した腕に力を込めている。
仄暗いテーブルの上の金と銀の食器全てを、ルビーやエメラルドなどの宝石が縁取り、それがキャンドルの灯りに妖しく光っていた。
明がいっそう力を込めて凜を引き寄せた。片方の手の指が凜のあごを掴んでいる。凜の胸が苦しく、そして激しく高鳴った。
「この人、私を抱くつもりだわ。」 そう確信した。
キャンドルの灯りだけのソファーで、凜はエロティックで甘い時間を予感してウットリと囁いた。
「なんて、素敵なの…。」
…凜は眼を開けた。自分の顔が硬いキッチンのテーブルに乗っているような気がした。そしてなんとなく見えたものが我が家のキッチンの風景だと突然気づいた。
「えっ。」 急いで顔を上げた。
「夢?」 慌てて口の周りのよだれを手で拭いた。
「夢なの? エ~ッ。」 凜の叫びが空しくキッチンに響いたのである。
(つづく)
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