第2話 暗証番号1978
建物の中は物音がせず、しいーんと静まり返って居り、どうやらペンションには誰もいないようでした。するとモニターがまたメッセージを表示しました。
“キーロッカーの秋雨の扉キーに、「1978」と入力してください。「1978」がさみ子さんの暗証番号です”
(なになに、暗証番号式なのね)
「それにしても静かだわ」
さみ子は、窓の外へ視線を投げました。車のエンジン音がなくなったので、辺りは風の音と枝擦りの音、どこかからせせらぎの音が聞えて参りました。明るめの雑木林で、ふわふわの落ち葉の上に、ちろちろと光が揺れていて、ところどころ木漏れ日が光の線を作って射して居りました。
ロビーにはキッチンがついて居りましたので、とりあえず電気ポットに水を入れて、コンセントにつなぎました。
「今日は私一人かしら?」
さみ子はお湯が沸く間にと、二階へ荷物を持ってゆきました。2階へ行くと、右が秋雨の間で、左が春雨の間でした。さみ子は、二階にも人の気配がないことを確認して、秋雨の間の扉キーに、「確か、1978よね」と云って、番号を入力しました。そして扉を開けると、、、、。
扉の内側は、ディスコになっていて、懐かしい曲とともに、薄暗い部屋の中でミラーボールが回って居りました。
パタン。
さみ子は慌てて扉を閉めました。そして、息を止めました。
「今のはなあに?」
辺りはやはり静まり返って居りました。
(見間違えかも知れないわ)
さみ子は息を整えて、もう一度「1978」と入力しました。そして、おそるおそる扉を開けると、、、、。
なんてことはない、赤で統一された普通のベッドルームがあるだけでした。正面の窓の外には、ちょうど赤くなった紅葉が揺れて居りました。ほおっと、さみ子は胸をなでおろしました。
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