第6話

授業が終わり、グラウンドに向かうと、陸上部の顧問と思われる山本先生が、俺にこう言って来る。


「西村、早く着替えて来なさい」


「あ、はい、分かりました」

そう言って、校庭にあるプレハブ小屋に向かう。プレハブ小屋にたどり着いて、中に入り、西村と書かれたロッカーを開き着てる制服を脱いで、ジャージ姿になる。

他の女生徒も着替えの真っ最中で、下着姿がほとんどだったが

全くと言っていいほど、興奮しなかった。

この状況に馴染んでしまったんだな……

改めて実感し、着替え終わって、プレハブ小屋を出る。グラウンドに陸上部の生徒が集まっているのを見かけたので、俺もその中に入る事にした。ホイッスルを首から下げた山本先生が、こう言って来る。


「今日は、百メートル走を五本セットでやるわ、あまりやりすぎるのも体をいためるので、今日はそれぐらいよ?さあ、準備して!」


は~いと皆言ったので、俺も準備をする。

そして、俺の番に百メートルのタイムを計った。計った後、山本先生に報告すると、山本先生はこう言ってきた。


「今日は、まあまあのタイムね?この調子で頼むわ」


「はい、分かりました」


「今日は、もう部活をやめていいわよ、それとも残って練習していく?」


「いや、今日はこれから用事があるので、お先に失礼します」


「そう、お疲れ様、明日も部活あるから、よろしくね」


「はい、分かりました」


そう言って俺は、プレハブ小屋の中に入り、制服に着替える。ジャージを洗おうと思い、スポーツバックの中に入れて、小屋の外に出る。

小屋の外に出て、教室に向かって、教室内に入ると孝之と香織が待ってたみたいなので、声をかけた。


「部活終わったわよ?」


「お、そうか、今日はいつもより早く終わったような気もするが、まあいいか、じゃあ行くぞ」


「OK~、じゃあ私も準備出来てるわよ」


「りょ~かい」

三人で教室を出て行って、外に向かった。

外に向かう途中、香織がちょっと待ってね?と言って、一旦離れて、そして戻ってきた。

戻って来たときに、一人の女子生徒を連れてきていた。


「紹介するね?私の友達の、水無月あかねちゃんだよ」


「水無月あかねです、よろしくお願いします」

そうぺこりとお辞儀する。

始めまして……って、水無月あかねって、ラブチュチュに出てきた攻略対象者の一人じゃないか?それに孝之とは面識がって……

そっか、あかねルートには入っていないから

あかねとは出会いはないままだったのか、それなら始めましてって言うのも納得出来る。


「あ、俺は、初崎孝之」


「私は、西村舞よ」

とりあえず自己紹介をする事にした。ちなみにこの水無月あかねの容姿は、前作「ラブチュチュ」では、栗色のショートカット姿だったけど

今の姿は、栗色のロングヘアーになっていた。

うん、髪型が違う水無月あかねを見るのって

ゲーム姿だったから、ちょっと新鮮かも……とそう思ってしまった。四人で行動する事になり、町の中を数分歩き、駅方面に向かう。

数分後、駅周辺にたどり着いて、近場にカラオケ店を見つけたので、そこに入る事となった。

カラオケ店の名前は「ネオ・エコー」と言うらしく、何がネオなのか全くわからなかった。

店内に入り、一緒の個室にして、中に入る。

内装はブルーをイメージしているらしく

ライトも少し青くて、結構綺麗な色をしていた。


「じゃあ、最初に誰から歌う?」


「じゃあ、私から行くよ、孝之君、あとでデュエットしない?」


「何で俺が、志木と……?ま、いいけどな……」


そう言って、香織が歌いだす。

おお、高音ボイスで結構上手く、全くミスもしないで、完璧に歌い上げていた。

滅茶苦茶うまいなあ、香織てわてん

「じゃあ、俺の番だな?行くぜ~」

そう言って、マイクを持ち、曲が流れる。

曲調からして、デスメタル風だった。

まさか、孝之がこんな趣味だったとは?かなり、驚いてしまった。

しかも声を張り上げて歌っているので、かなり上手だし。曲が終わって、「どうだ?俺の歌は?」とか聞いてきたので、俺はとりあえず

「よかったよ?」と言ってやる事にした。

俺の番になったので、曲を入れる。

この世界と前の世界とは、歌が全く同じだったので男だったときに歌っていた曲をセレクトした。

俺が歌い終わると、孝之が


「舞って、そんな歌が好みだったのか……意外だな?」


「孝之に言われたくないんだけど?」


「まあ、いいんじゃないかな?人、それぞれの好みだしさ?」


「まあ、そうだな、じゃあ、曲をバンバン入れるか!」


「じゃあ、次、私が歌いますね?」

水無月あかねがセレクトした曲は、思いっきりアイドル曲だった。振りも完璧で、可愛く歌い上げて、終わった後「どうでしたか?」と聞いてきたので、皆で「よかったよ」と言う。


「じゃあ、次は俺のターンだぜ~」

そう言って、孝之は歌いまくる。俺はどっちかと言うと、たくさん歌う事はしないで、数曲程度にしといたのであった。時間が来て、店内を出ると、外はもう真っ暗だった。

四人で歩いていると、香織がこう言ってくる。


「じゃあ、私はここで、別れるよ?今日は楽しかった、また誘ってね?じゃあね」


「じゃあ、私も香織さんと一緒に行きます」

あかねもそう言ってきたので


「そう、じゃあ、さようなら、二人とも」


二人と別れる事にした。


「また誘ってって……俺と行きたいって事か?それとも舞と?」


「ん?孝之は、気になるの?もしかして……香織の事を好きになった?」


「な、何言ってるんだよ?そんなわけないだろ?」


「ふ~ん……?別に、私は、孝之が香織と付き合っても、いいと思うわよ?」


「な、何言ってんだ?舞、俺はな?」

と言って、いきなりキスしてきたので、驚いてしまった。

しかも、無理矢理だったので、気が動転してしまい「ん~……」と変な声が出て、引き離そうとしたけど胸も揉んできて、ちょっと感じてしまった。数十秒キスされた後、孝之が


「俺が好きなのは、舞だからな!?だから、こうしたんだ」


と言ってくる、俺は


「いきなり何するの!」


そう怒ってみると


「別にいいだろ?嫌だったら、拒否すればいいのにな?拒否がなかったし、満更でもなかったんじゃないか?」


とか言ってきやがった。

確かに……言われてみれば、ちょっとはそう思うけど


「む、無理矢理でびっくりした訳!」


「まあ、そう怒るなよ?じゃあな?」


そう言って、孝之が逃げるように、家の中に入って行った。これ以上外で文句言っても、仕方がないので、家の中に入ると、母親の西村恵子さんが出迎えてくれた。


「お帰りなさい、舞、今日は遅かったわね?」


「孝之とちょっとカラオケに行っててね……」


「あら?舞……なんか、顔赤いわね~?何かあったの?」


「……孝之に無理矢理キスされちゃった」

「あらあら~そう~、じゃあ付き合うのかしら~?」

「そ、そんな訳……」


「でも、顔が赤いって事は、ドキドキしたんでしょ?嫌じゃないって事じゃない?」


「う……と、とりあえずお母さん、これ洗濯お願い!」


そう言って俺は恵子さんに、手に持っているスポーツバックを渡す。


「この中にジャージが入ってるから、それを洗ってほしいの」


「解ったわ、洗っておくわね?あ、お風呂湧いてるけど、入るでしょ?」


「う、うん、入る」


「じゃあ、入ってきなさい、バスタオルと着替えは、用意してあげるから」

「は~い」

俺は浴室へと向かった。

浴室に辿り着いて、着てる制服を脱ぐ。

下着姿になり、ブラとパンティーも脱ぎ、裸になった。改めて見てみると、結構な胸があり、肌もスベスベだった。

男だった時、こんなにスベスベしてないよな……と思いながら、シャワーを浴びる事に決めて、シャワーのノズルを捻る。

温度が丁度いいくらいに設定されており

スポンジに石鹸をつけて、体を洗う事にした。

まず首筋からやって、腕を擦り、胸を洗う。

胸を触るたび、結構揺れ動くので、ちょっと洗いにくくしかもなんか少し気持ちいい感じがしてしまった。


「ん……」


思わずそんな声が出てしまい、はっとしてしまって、胸を弄るのをやめる。次に脹脛や足首を洗い、最後に股間を洗う事にした。

結構大事な部分だとは、思うので慎重に洗っていく、触っていくうちに、なんか変な気分になってしまい、鏡があったので見てみると、顔が赤くなっていた。

これが俺……?なんかエロイ……

この姿を男が見たら、襲いかかってくるんじゃないだろ~かて……と一瞬思ってしまった。

胸も大きいし、スタイル抜群なので、結構エロク感じられる。

って、そんな考えをやめる事にして、最後にシャンプーで頭を洗う事にした。

頭をゴシゴシと洗っていき、洗い終わってから湯船に浸かる。湯船もいい温度に設定されていて、足をのばしてリラックスする事にした。

つい、気持ちよくて鼻歌も口ずさんでいると

浴室の外から


「舞、着替え、ここに置いとくわね?」

恵子さんの声が、聞こえたので、俺は、こう言う。


「あ、うん、ありがとう、お母さん」


「あんまり長湯しちゃだめよ?」

「りょうか~い」


そう言ってから、五分間入り、出る事にした。

バスタオルが用意してあったので

それで体を拭いて、着替えが籠に入っていたのでそれを着る事にした。

下着を見てみると、パンティーの色が緑色をしていて、端に蝶の模様が描かれていた。

一体どんなセンスなんだ?これ……思ったが、せっかく用意してくれたので、それを履いてみる。なんか、履き心地がバッチリで、ジャストフィットした。次にブラを見てみると、お揃いなのか、こっちも同じ蝶がデザインされている。サイズもぴったりで、戸惑う事なく装着する事が出来た。

装着してから思うのだが……

男だった俺が、こんなに簡単にブラを装着出来るなんて……やばいんじゃないか?とか思ってしまったのである。

まあ、深く考えない事にして、用意された服を着る。これも、緑色に統一されていた。

着替え終わって、リビングに行くと、恵子さんと父親の新三郎がいた。

テーブルの上に、料理が置いてあったので、これから夕食か……と思ったのである。


「あ、舞、あがったのね?」


「うん、それよりお母さん……気になったんだけど?」


「何?」


「あの下着のデザインは何?なんであんなのを?」


「あら、それはね?舞だって、もう高校生なんだし、大人っぽいのでもいいと思ったのよ、それに、男を落とすんだったら、あのぐらいじゃないとね?あ、でもちゃんと避妊はするのよ?まだ高校生なんだし」


「舞、好きな男でも出来たのか?というか……誰だ!私の可愛い娘に手を出すのは!」


「す、好きな男なんていないって、それに性行為とか、私はしないから!多分……」

「多分……と言うことは、少しは興味あるわけ?」


「う……うん、ちょっとは」

まあ、ほんのちょっとだけだけど、そう思っていた。


「まあ、いい体してるしね?舞は、すっごい魅力的に見えるし?かなりもてるんじゃない?」


「い、今の所、そう言ったのはないよ……近くに孝之がいるし」


「じゃあ、孝之君が、彼氏になる可能性もあるって事ね?」


「う~ん……どうかな」

「孝之君か……まあ、あの子なら私も認めてやってもいいか」

「な、何言ってるの、お父さん!」

そう言い合いながら、三人で夕食をとる。

夕食は、海の幸が入っている、シーフードカレーだった。一口食べただけで、海の幸が口いっぱいに広がって、かなり美味しくあっと言う間に、食べ終わってしまった。


「ごちそうさま」


「恵子さん、もう一杯くれるかな」


「はい、解りました」

そう言って、新三郎はおかわりをしている。

俺は、食べ終わったので、自分の部屋に戻る事にした。舞の部屋と書かれた場所に辿り着いて、早速ノートを開く。

ノートを開いて、ノートにこう記す。

「三日目、今日は志木香織と、初崎孝之とそして水無月あかねの四人で、カラオケに行く、孝之に無理矢理キスされちゃった……すぐに引き離せばよかったのに、自分の心がちょっと信じられない……まさか、心も女の子になっていくんだろうか……?こうなったら、他の攻略キャラと孝之をくっつける方向で動こうかな……と思う」

そう書き記して、ノートを仕舞う。

孝之にキスされたとき、何故か嫌じゃなかったんだよな……これは孝之を好きになりかけてる?まさかね……

とりあえず……明日の準備をして、目覚ましをセットし、布団にもぐる。

布団の中で、明日はどうするかなと、考えて

他の攻略対象キャラに会ってみようと、思う事にして、瞼を閉じる。

こうして、今日の一日が、終了したのであった。

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