僕たちは今から
「エリカさんのことが好きなんだ……っ! これからもずっと、僕と一緒にいて欲しい……!」
言った。
なんとかギリギリ。
エリカさんより先に言えた。
それは僕の正直な気持ち。
僕はこんな性格だから……今までにいいなって思った人がいても、怖くて自分の気持ちを伝えることはできなかった。
けど、いつだってエリカさんは、僕が今まで怖くて出来なかったようなことを僕に見せてくれた。
母さんがやってきたときもそう。
自分の力と向き合うことになったときだってそう。
エリカさんは凄い。
年齢なんて関係なく、僕は彼女のことを心から尊敬してる。
それは今だって。
まだ僕よりもずっと小さいのに、エリカさんはちゃんと自分の気持ちを言葉にしようとしてる。だから、この言葉くらいは僕から言わないとって……そう思って必死に言った。
「これからも、ずっと一緒に……?」
「あ、あうあう……っ!? そ、その……もし迷惑だったら、せめていい友だちで……」
「〝いい友だち程度〟で、この私が満足できるとお思いですか……? 念のため断っておきますけど……私の気持ちはとても〝重い〟ですよ? それでも……いいんですか?」
「そ、それは僕も知ってるよ……っ! でもそれがいいんだ……僕は、エリカさんともっと仲良くなりたい……!」
「そう、ですか……。私……凄く嬉しいです。これからも、よろしくお願いします……
「うん……っ!」
とっても可愛い三つ編みに手を添えて、僕の前に座るエリカさんは、潤んだ瞳で今までで一番の笑顔を僕に向けてくれた。
嬉しい。
すごく嬉しい……っ!
エリカさんが僕にこんな素敵な笑顔を見せてくれるのが。
僕の言葉で、エリカさんが笑顔になってくれたのが。
たまらなく嬉しい。
今すぐ〝
も、もちろんそんなことはしないけど!
とにかく、それくらい嬉しかったんだ。
〝エナのこと、頼んだよ。結局私は、彼女を泣かせてばかりだったから……どうか私の分も、彼女を笑顔に〟
あの時。過去の光景の中で見たソウマ様の言葉が少しだけよぎる。
たしかに過去の僕……ソウマ様にとってエナさんは大切な人だった。だけどそれはまだ愛や恋みたいな気持ちじゃなくて、信頼や友情に近い感情だったんだと思う。
エリカさんはさっき、過去の自分には好きな人がいたって言ってた。
きっとエリカさんも、過去の光景を見た時にエナさんの想いを見ただろうし、ソウマ様が過去の僕だってことにも気付いたと思う。
過去の世界でも、
けど……過去の僕たちは、何もかもが始まる前に終わってしまった。
あのままソウマ様が生きていたとしても、エナさんのことを好きになったかはわからない。エリカさんが言っていたように、気持ちは閉ざされて、二人の関係は始まってもいなかった。
今みたいに、相手に好きだって伝えることも。手を握り合うことも。
お互いが辛いとき、大変なときに支え合うことも出来なかった。
だから……今度こそ先に進むんだ。
ソウマ様でもエナさんでもなく。
僕とエリカさんが繋いだ気持ちで。
僕はエリカさんのことが大好きだから。
いつだって一緒にいて。いつだって声を聞かせて欲しいから。
「じゃあ……マンションに戻ったら、すぐにお引っ越しの準備をしますねっ」
「うんうん……そうだ、ね――――ってなんで!?」
「え……? なんでって、私も鈴太郎さんと一緒に住めば家賃も少なくて済みますよね?」
「えええええええ!? ちょ、ちょっと待って……っ! エリカさんはまだみせ、未成年だからっ! ぼ、ぼぼぼぼ、僕も本当はそうしたいけど……! ちょっとだけ待って! まず〝僕が逮捕されないか〟調べるから……っ!」
「むー……日本の法律って面倒なんですね。でも、鈴太郎さんが逮捕されては私も困るので、何か抜け道を探して早く一緒に住みましょうっ! ね、鈴太郎さんっ?」
「あわわ……っ! わ、わかりましたああああっ!」
と、とにかく。
こうして僕とエリカさんは恋人になった。
僕の前でとても嬉しそうに笑ってくれるエリカさんは本当に綺麗で、今すぐ抱きしめたいくらい、苦しいくらいに愛おしかった。
絶対に守るんだ。
今までずっと辛い思いをしてきて……それでも今、こんな風に笑ってくれるエリカさんを。これから先、一つだって悲しませたりしない。
たとえこの先に……あの過去よりも辛い現実が待っていたとしても。
昔の僕とエリカさんが、あのとき一人で乗り越えられなかった困難がまた立ち塞がったとしても。二人になった今の僕たちなら、きっと――――。
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