第七話
地と月の狭間で
『ハーッハッハッハ! ようやく戦えたぞ〝
「お前に礼を言われる筋合いはねぇな……! 大丈夫か、
「ご、ごめん
どんどんとその成長速度を増していく太極の根。母さんに吹き飛ばされた僕をカバーに入ってくれた悠生に頷くと、僕はもう一度三日月の光輪を輝かせる。
そしてそんな僕たちに目掛け、まるでアニメに出てくる主役ロボットみたいなデザインのシュクラさんの機体が、蒼白い光の尾を引いて襲いかかってくる。
『ハハッ! お主にはなくとも、我らには大有りなのだっ! 母がいなくともまだ〝父〟が残る円卓と違い、我らには〝太極しかいない〟からなっ! この二十年、それはそれは苦労したものだ!』
「そうかよ! ちょうど円卓だけを潰したんじゃ不公平だと思ってたところだ。お前ら
『その意気や良しだッ! 行け、フェザーガンビット!』
瞬間、シュクラさんのロボットは機体の周囲に、銃口のついた沢山の翼状の兵器を生み出して……ってこれ、僕も見たことがあるロボットアニメで出てきた武器……!?
「星よ――――ッ!」
それを見た僕と悠生は、成長を続ける根に沿って加速しながら左右に分かれる。
同時に二十七個の星を呼び出し、シュクラさんの展開した自動で僕たちを攻撃する無数の翼にそれぞれをぶつける。
「速い……っ!」
『フッフッフ! この私のガンビット捌き、果たしていつまで――――』
「燃えろ、全てを焼き尽くせ……っ!」
それぞれが意思を持つように、小刻みに死角を取り合う光と翼の乱舞。でもその戦いは、エリア一帯全てを横薙ぎに払うとんでもない量の蒼い炎によってかき消される。
『ぬわーーーーっ!? 私のフェザーガンビットがーーーーっ!?』
「うわーーーーっ!? ぼ、僕の星がーーーーっ!?」
「すみません
僕とシュクラさんの戦いに割って入ったのは、蒼い炎の竜に乗って飛ぶエリカさん。
エリカさんは自分の周りにはっきりと浮かぶ炎輪を高速回転させながら僕たちを一気に追い越すと、シュクラさんと僕の攻撃を焼き尽くした炎を収束させて、直径数十メートルはありそうな火球にして投げ下ろす。けど――――。
「お待たせしたね皆々様。〝俺の土〟……ようやく集まったわ」
「これは……っ!?」
「い、隕石……!?」
でもその時。今までずっと印を結んで力を放出していたシャニさんが根の先へと飛び上がる。袈裟をはためかせて印を解き放ったシャニさんの背後から、黒い影になって現れたのは沢山の大きな石の塊。う、嘘でしょ……シャニさんってこういうのも操れるの!?
エリカさんの降らせた火の玉が、後から現れた大きな石の塊に押し潰される。隕石はそのまま根にもぶつかるけど、こんなに大きな隕石がぶつかっているのに、太極の根はびくともしてない。そして――――。
「いやいや、さすがに宇宙でこれだけの土を集めるのは骨が折れたわ……次を集めるまでにはまた時間がかかるから、その間は二人で頑張って――――」
「いいや、お前に〝次〟はねぇ――――!」
一瞬。
それは本当に瞬きするほどの一瞬だった。
きっとシャニさんも、あんなことを言っても油断はしてなかった筈。
けど拳が。
母さんのとは全然違う、見る度に僕のことを励ましてくれる悠生の拳が、隕石を落とした直後のシャニさんを、シャニさんを守る石壁ごと撃ち抜いたんだ。
「あが……っ。マジか……ぁ……?」
「良かったな、今ならまだ〝落ちれる〟ぞ。お前の好きな、土まみれの場所にな」
「あら……? そりゃ、安心だ。悪いね二人とも……俺はお先に失礼しますわぁ…………」
時間にしたら数秒の出来事。
悠生の拳に
『っ!? シャニをやっただとっ!?』
「なら、次は貴方です……っ!」
それに気を取られたシュクラさんのロボットに、今度は炎を纏ったエリカさんが襲いかかる。そしてそれを見た僕は、エリカさんの援護のために星の光を向かわせながら、光の道を奔らせて加速する。
シャニさんの制御を失った沢山の隕石を避けながら、それでも僕たちは更に更に蒼い地球から離れていく。
成長を続ける根と、そこに降り注ぐ隕石。そしてそれを縫うようにして燃え上がる炎と星の光。
そして――――。
「このまま決める……ッ! 合わせるぞ、
「いいですよ、悠生っ!」
エリカさんの援護を星の光に任せて僕が向かった先。
それは悠生の戦場だった。
シャニさんを倒した悠生は勢いを緩めなかった。
永久さんの光と灼熱の撃ち合いを続ける母さん目掛けて、さっきの僕と同じように挟み撃ちを仕掛けたんだ。というか、本気を出した母さんとここまで戦えるなんて、やっぱり永久さんも途轍もなく強い――――っ!
「〝彼の者の力〟を双方から感じる……妙ですね、なぜ力を分けたのです?」
「えーっ!? もしかして知らないんですか? この力って、〝愛する人と分け合う〟とすーっごくパワーアップするんですよ!」
「なんだそれ!? 俺も知らなかったぞ!?」
「ふふっ、そうですよっ! だって……昔の私よりも、悠生のことが大好きな今の私の方がとっても強いですからっ!」
さっき僕がやったときは簡単に弾かれた永久さんとの挟み撃ち。それと殆ど同じ形で叩き付けた悠生の拳と、永久さんの紅い閃光の渦。
まるで二人の力が共鳴しているみたいに力の波が交互に波打って、それは瞬間瞬間ごとにどんどん強くなる。
「……っ! この、力……紛う事なく〝彼の者〟と同一……!」
「俺と永久の力は〝殺し屋の力を殺す〟……! これがお前にも効くってことは、お前の力も所詮は〝殺し屋の力〟ってことだろうがよッ!? 神だなんだとほざこうが、結局お前らも〝ただの殺し屋〟なんだよッ!」
「おのれ……ッ! 殺し屋殺し……ッ!」
す、凄い……っ!
僕の月を簡単に砕いた母さんの太陽を、悠生と永久さんは二人で互角以上に抑え込もうとしてる!
あの力を発動した悠生だけでもとんでもない強さだったのに、永久さんと二人だと、あそこまで……っ!?
「月よ――――!」
でも同時に、僕はすぐに月の光を展開して悠生と永久さんの援護に入った。
月と星の力を全開にして、母さんの力を砕きかかる。
だって、僕の目の前で二人の攻撃を受け続ける母さんは、まだ――――!
「ほざくな……ッッ! この私の……! 神から〝この世の行く末を託された〟この私の太陽が……! 貴様ら殺し屋と同じなどと……思い上がりも甚だしいわ――――ッ!」
「きゃっ!?」
「この……ッ!」
閃光。そして燃え上がる灼熱。
悠生と永久さん二人がかりの力。そこにダメ押しの僕の攻撃まで受けたのに、母さんはそれを耐えきった。それどころか僕たち三人を弾き飛ばして、押し返すまでやって見せたんだ。
「……っ! ふ、二人とも大丈夫!?」
「はわ~~……目が回りますよ~~……っ?」
「まさか今のを凌がれるとはな……母は強しってのも限度があるだろ……っ」
僕はすぐさま弾かれた永久さんと悠生をキャッチする。今のは二人にとっても殆ど全力の攻撃だった筈なのに、それも通じないなんて……!
ここまでやったのに……〝
こみ上げてくる悔しさに、思わず拳に力が入る。
けどそんな僕を見た悠生は、どこか覚悟を決めたように不敵に笑ったんだ。
「いや……まだ終わっちゃいない。やるぞ鈴太郎……最初に言った通り、〝俺とお前〟でな……!」
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