第30話 真綿
「皆も夕食食べていく?」
「何作るんだ
「あらあら私達もいいの? 邪魔じゃない?」
「鬼……早く作る」
ソラはまるで自分の家のように寛いでいる。そして
「ソラは気を許したら遠慮しないからな」
かおるの意見に私も同意。
「前から思ってたけど千姫ってさ、あんまり部屋に物置いてないよね?」
3人が来たので改めて思うけど必要最低限しか物が無い気がする。最近では桃太郎のおもちゃやペットグッズがほとんどを占めている。
なんだっけこういうの?
ミニマリストって言うんだっけ。
「そうかな? まぁいっぱい持っててもね」
答える彼はどこか歯切れが悪い。持っててもなんなのだろう? そこが聞きたいのに。
「まぁごちゃごちゃしてる部屋よりはいいだろう」
「そうね、
「フフ……雪音の部屋は汚部屋」
「なっ、ちゃんとあれから片付けてるわよ! 千姫の前でなんて事言うの」
3人が以前私の部屋に突撃してきた事がある。その時は……まぁアレだった。うん……アレだった。
「せ、千姫今はちゃんと片付けてるから……その嫌いにならないでね?」
恥ずかしさも相まってモジモジしながら彼を見る。彼はニコリと笑いながら優しく答えてくれる。
「嫌いにならないよ。おっちょこちょいな雪音も可愛いから」
「か、かわ……」
「それに、僕と雪音が一緒に暮らせばプラマイゼロじゃない? ほら、雪音が散らかして僕が片付ける」
「ほへぇ〜」
ダメだ。デートの時から千姫の攻撃力がぐんぐんあがっているので、ペタリと床に尻もちを付いてしまう。そこに桃太郎が来てぺろぺろ攻撃。
「アハハ……犬も食わぬとはこの事か」
「かおる、それは夫婦喧嘩の時のことわざよ。それを言うなら
「えん? 鬼わかる?」
「いやぁ僕は全然……ちょっと調べようかな」
「し、調べなくていいから! 咲葉もなんてこと言うのよ!」
「雪音がアワアワするの楽しいから」
この女もエネミーだ。
「じゃあ僕は桃太郎のお散歩のついでに買い物に行ってくるから皆で遊んでてよ」
「えっ千姫が行くの? だったら私も」
「はいはいストーップ。ここは公平にくじ引きで決めましょう」
咲葉の意見に疑問顔。
「くじ引き?」
「量が量だから買い出し班は3人にするわ。そして2人はその間準備とかその他をしてお留守番」
よっしゃぁぁ!
これに勝てば合法的に千姫とお留守番できる。一緒に買い物も捨て難いけど3人というのがネックだ。何としても勝ち取るわよ!
「はーい、それじゃあくじ引きしまーす。王様だーれだ?」
スポンッ
アレ? そんなゲームだっけ。
――――――
「何も駄々こねること無かったと思うぞ雪音」
「……」
「フフ……雪音はホントにワガママになった」
「……」
笑うがいいさこの姿を。
私と悪友2人はスーパーマーケットに向かう途中だ。1発でジョーカーを引いてしまったこの手を呪ってやりたい。
今頃、千姫は咲葉の色香に……ぐぬぬぬっ。
「ほら、さっさと行くぞ」
「お腹空いた、早く食べたい」
2人に引きずられながら私は彼へと思いを
――――――
――――
――
「ただいまぁ〜重いよ〜」
「おかえり3人とも、雪音持つよ」
「ありがと〜」
私は袋いっぱいに入った野菜やらお肉を彼に渡す。
「ねぇ、咲葉と何も無かった?」
「な、何も無いよ」
怪しい……非常に怪しい。
雪音レーダーが告げている。
何か隠してるな。
「ほんとに〜」
下からジッと彼の瞳を覗き込む。
その距離は10センチ。
やっぱりキレイな瞳。
見当違いな事を思っているけど心は素直にそう思う。
「雪音……早く入る」
ムニィ
「ひゃんっ!!」
ソラが私のお尻を掴んでグイグイと中に押し込む。その弾みで私と彼の距離が……
「「あっ」」
――チュッ
「「んんっ!?」」
時間が止まる。
フリーズする。
止まった時間の中で私の心臓が弾む。
重なる2つの瞳は桃の花。
唇と心が無垢な真綿に包まれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます