第12話 相談
彼から花見に誘われた日の放課後、私は悪友3人にその事を相談する為に喫茶店を訪れる。
『ブラザー』という看板を潜り店内の奥の4人がけの席に案内された。
――――――
「おぉ。あの
「あらあら、流石鬼ちゃんね!」
「鬼の名を持つものは強い……
花見に誘ってくれたと打ち明けると、3人は彼の事を褒めつつソラだけは私をからかう。
負けてないし、見くびらないでよね。
「で、なんて返事したのか? まさか」
「そうそう、そこが重要よ! もしかして」
「雪音はヘタレだから、断ったに違いない」
皆は私が断ったと思っているのか……まぁ確かに今まで男友達と遊ぶ事なんて小学生の時に皆でドッチボールをしたくらい。
だから私はいつもの仕返しとばかりに驚かせてやるのだ!
「全力でOKしたわ!」
ドヤッ!
っと効果音がでそうな顔で私は胸を張って3人に答える。
「はっ?」
「えっ?」
「ま?」
私はなぜこのことでドヤ顔をしたのだろうと恥ずかしくなり、意味もなく立ち上がって腰に当てた手をゆっくりと下ろす。そしてそれと同時に顔に熱が集中していく。
「そっかぁ」
「長かったわねぇ」
「雪音」
3人は頼んでいたドリンクを口に持っていき遠くを見つめながら飲んでいる。まるで田舎のおばあちゃんのような貫禄だ……その光景を見て少し冷や汗をかいてしまう。
そして3人はおもむろに私の方へ振り向くとこう続ける。
「「「雪音にも春が来たぁぁぁ!!」」」
満面の笑みで訳のわからない事をほざきだした。
「ななな、違うから! 私はそういうつもりじゃないからっ」
全力で手をブンブン振りながら否定する。その光景を料理を持ってきた髭面の店長が優しく見つめて。
「青春だな」
サムズアップして厨房に戻っていった。
「もぅ……そんなんじゃないのに」
他の人に見られた恥ずかしさと、悪友達にからかわれた羞恥心で益々顔が熱くなる。パタパタと意味の無い
「いつ行くんだ?」
その質問に頭の中で彼との会話を思い出しながら返事をする。
「えっと再来週の土曜日に……」
「どこに行くの?」
「えっとね――」
「――へぇ、そんな所があるんだね」
「うん、彼も行ったことないみたいだけど……いつか行ってみたいって事で一緒に」
それを聞いていたソラが横槍を入れてくる。
「雪音は鬼神のどこに惚れたの?」
「ほぇ?」
彼女の予想外の質問に私は間抜けな声を出す。そしてワタワタと慌てながら否定する。
「ほ、惚れてないから! 勘違いしないでよねっ!」
「じゃあなんで一緒に行くの?」
「それは……その」
私は急にそんな事を言われたのでなんて答えていいかわからず黙ってしまった。
「どう思いますか、咲葉隊員」
「そうですね……これは」
「これは……」
ゴクリと唾を飲む咲葉とソラ。
「間違いなく恋ですね!」
「「おぉ!!」」
「ほんとに雪音に春が」
「フフ……今日は赤飯だね、雪音」
言われっぱなしじゃムカつくからそれに負けじと反論する。
「違うってば! ただ……」
「「「ただ?」」」
顔がマグマのようになった私を見る3人にボソッとした声で答える。
「なんか、ほっとけないのよね……彼」
「ほうほう」
「学校でもそうだけど、家での彼もちょっと抜けてるってゆーか……危なっかしいってゆーか……」
ここで私は大失態をおかした事に気付かずに話を進めてしまう。
「初めの頃なんて
あはははっと笑う私を3人は無の顔で見てくる。
「雪音……もう一度初めから」
「え? だから桃太郎に」
「「「そこじなゃない!」」」
3人の圧が強い。
私何か変な事言った?
「家って言わなかった?」
「うん、言ったけど……あっ」
あっ! これはやっべぇやつだ。
「雪音」
「……はい」
「わかってるな?」
「……はい」
「フフ……今夜は寝かせないゼ」
「くっ」
その後、お店の閉店時間ギリギリまで私は質問攻めに遭うのだった。
まぁ……今度彼に謝ろう。
この時からかな。
話す口実ができたと思うほど彼の事を考えるようになっていったのは。
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