第2話緑のたぬき編


 彼は「緑のたぬき」をかかげ、みさきに見せながら言う。


 「貴様は分かっていないようだな、この『緑のたぬき』のすばらしさが! 何と言ってもその喉越し、そしてガツンと来る出汁の効いたつゆ、更にサクサクからとろりとなりながら最後までそばと一緒に楽しめるかき揚げ! まさしくこれこそ至高パーフェクト!!」


 彼は緑のたぬきを抱え上げ恍惚こうこつと語る。


 「学生時代はこれにおにぎりで昼食を何度乗り越えた事やら。ああ、なつかしきあの味。最後に残り汁におにぎり入れておじやにして食うのが旨いんだよ」


 するとやかんにお湯を沸かしながらみさきは鼻で笑う。


 「ふん、貧乏学生の所業ね。そばって立ち食いそばとかでがっついてる男のイメージしか無いわ」


 すると彼は憮然となっていう。


 「なんだよ、悪いかよ。そんなお前だってカップ麺喰うじゃんかよ」


 「ふん、そんなかき揚げがグダグダになってかき揚げだか天かすだか分からなくなるようなジャンクフードと違い最後までエレガントなこの『赤いきつね』の方がいいに決まっているじゃないの!」


 カッ!


 そしてまたまた背景が真っ黒になりみさきの後ろのきつねが蟷螂拳の構えをする。

 対して彼の後ろのたぬきは酔拳の動きをする。


 大人の対応だったはずの二人だったが、一歩も譲らない二人はこの後一体どうなるのか!?

 

 やかんのお湯が沸き、「ピーっ」という戦いの合図をするのだった!

 

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