第12話 決別と再会6
「それにしても、さすがにLサイズは大きかった……。残り五切れだけど無理」
「二人で分けて明日の朝ごはんにでもしましょう」
「賛成~」
一時間経ったころにお腹を押さえながら、桂さんは言う。僕も満腹で動くのも億劫だ。やはりいくらお腹が空いているとはいえ、無理があった。あと、飲み物を炭酸飲料にしたのも失敗だった。今後は気をつけなければ。
「あと、駿河これ」
桂さんはデニムのポケットから取り出したものをローテーブルに置いた。
「鍵……ですか」
「そう、ワタシの家の合鍵。ワタシ、忘れ物とか落とし物が多いからさ、お母さんから、『信頼できる友達が出来たら、もしものために渡しておきなさい』って言われてて。駿河ならなくさないだろうし」
「僕でいいんですか?」
「むしろ駿河が一番安心だろ。隣だし」
「いや、僕は男ですよ? そんな気軽に異性に鍵渡すのは……」
「駿河以外の男にほいほい渡すわけねぇだろ。駿河だからだよ」
「は、はぁ……。まぁ、そういうことならとりあえず受け取っておきますね」
桂さんが帰宅した後は、新しい作品のプロット作りに取りかかった。授業ではどんなことをするかまだわからない。でも、書かずに四月を迎えるのは周りに置いて行かれるような気がして怖いし、せっかく心置きなく書ける環境になったんだ。書かずにはいられない。
こないだ書きあげた作品は高校生が主人公の話だったな。主人公の男子高校生が文化祭の最終日の夜に花火を打ち上げる話。僕の高校で昔、本当に屋上から花火を上げた人がいるという話を聞いて、そこから想像膨らませて書いたんだよな。次はどうしようか。
視線の先にさっきもらった合鍵が見えた。どうするのが正解なのかわからないから、とりあえず僕の家の鍵と一緒につけて、玄関に設置している鍵フックに吊るした。仲間が早くも出来たんだ、頑張らなくては。僕はシャーペンを握った。
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