2014年5月2日(金)

2014年5月2日(金)


「──…………」

眠い。

眠かった。

窓の隙間から流れ込む春じみた陽気が、暴力的なまでに眠気を誘発する。

「──……!」

ぱさ。

取り落とした本を、慌てて拾う。

「ねむい?」

隣で漫画を読んでいたうにゅほが、俺の顔を覗き込んだ。

「春だから眠い……」

「かんけいあるの?」

「わからんけど、春はいつも眠い気がする……」

あふ、とあくびを噛み殺す。

「ふとんでねたら?」

「それはそれで、ぐーたら一直線のような気がして」

「かぜひかないかな……」

「あー……」

引くかもしれない。

「──ぃよし!」

ぱん!

と、両手で頬を叩いた。

「読書は眠くなる。なんかしよう!」

「でかける?」

「出掛ける──のは、ちょっと億劫だから、家のなかで」

「そうじ」

「掃除──は、こないだ中掃除したばっかだし」

「でぃーぶいでぃー」

「あ、パラレル西遊記まだ見てなかったな」

「うん」

決まりである。

リビングのテレビが空いていたので、さっそくDVDをセットした。

小学館の文字が画面を彩り、見慣れた東宝のロゴが光を放ち──

そこから記憶がない。

「……──◯◯、◯◯」

「んが」

目を開けると、エンディングが流れていた。

「おきた?」

「……寝てた?」

「ねてた」

うたた寝と言うか、もはや睡眠である。

さすがに目が覚めて、それ以降は眠気を催さなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る