2014年5月1日(木)

2014年5月1日(木)


「──おはなしがあります」

伊達メガネを装着したうにゅほが、こころなしかキリッとした表情で口を開いた。

「なんでしょう……」

「みてください」

iPhoneの画面を覗き込むと、家計簿アプリが表示されていた。

「これが、しゅうにゅう」

「ああ」

「ししゅつ」

「……──Oh」

支出合計が収入に肉薄していた。

「わかりましたか?」

「──…………」

「あー!」

無言で伊達メガネを奪った。

「わかったから、そのキャラやめて」

「うん」

こほん、と咳払いをして、うにゅほがタッチパネルを操作する。

「いちばんすごいのは、くれじっとかーど」

「それは思ってた」

利用明細が届いたときは、思わず我が目を疑ったものだ。

「でも、今月は臨時支出がたまたま重なっただけで、普段はその四分の一くらいだよ」

「そうなんだ」

うにゅほがほっと息を吐く。

「おさけだい──は、おもったほどじゃなかった」

「安ワインをちびちび飲んでるだけだもの」

「そだね」

「……それより、さ」

オレンジ色の扇型を指で示す。

「この、飲食費って──」

「これがもんだい」

「やっぱり……」

自覚はあったのだ。

「◯◯、でかけるときコンビニでジュースかうでしょ」

「うん……」

「そのとき、おかしとかもいっしょにかう」

「はい……」

「それが、これ」

「──…………」

目眩がしそうだった。

ビーフジャーキーが高いのが悪いのだ。

「これ、へらしたほうがいいとおもう」

「おっしゃりとおりです」

「はんぶんにできる?」

「できると思います……」

「そうしましょう」

うんうんと頷く。

ああ、こってりと絞られてしまった。

「あと──」

「まだあるのか!」

節制しよう。

そう心に誓うメーデーなのだった。

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