2014年4月24日(木)
2014年4月24日(木)
「◯◯ー」
「──……んが」
春の陽気に誘われて窓際でうとうとしていると、うにゅほが俺を呼んだ。
「あ、ごめん。ねてた?」
「寝てない、寝てない」
寝てたのに寝てないと言い張ってしまうのは何故なのだろう。
「とんぷそんかってきたよ」
「……なに?」
「とんぷそん」
「トンプソンって、なに」
まさか、サブマシンガンのことではあるまい。
「えと、くだものだよ」
「果物……」
果物は、あまり好きじゃない。
表情に出たのか、
「とんぷそん、おいしいよ?」
念を押すように、うにゅほがそう言った。
「うーむ……」
味がどうこうより、その正体が気になる。
重い腰を上げてリビングへ赴くと、食卓テーブルの上にそれがあった。
「……ブドウ?」
縦長の実をつけたマスカットのように見える。
「とんぷそん」
「それはわかったから」
買い込んだ食料品を片付けていた母親に視線で尋ねると、
「ブドウだよ。皮を剥かなくても食べられるの」
「へえー」
皮を剥かなくても、ねえ。
「でも、剥いたほうが絶対に美味しいと思うな……」
「むけないよ」
「剥けない?」
「たべたらわかるとおもう」
うにゅほがトンプソンを一粒もぎ、こちらに差し出す。
「はい」
「あー」
口を開くと、ころころしたビー玉大のものを押し込まれた。
「──……?」
想像していたより、随分と固い。
思い切って前歯で噛み切ると、
しゃく。
「!」
なんだか、すごく歯ごたえがあった。
「なにこれ」
「とんぷそんだよ」
知ってる。
「ブドウって感じしないな」
「でしょ」
「でもって、なにかに似てる気がする……」
数秒ほど熟考し、思い至った。
「これ、リンゴだ。リンゴに似てる」
「りんご、かなあ……」
うにゅほはピンとこないらしい。
「面白いブドウだなー」
「でしょ」
あまり美味しいとは思わなかったが、それは言わぬが花である。
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