2014年4月22日(火)

2014年4月22日(火)


あてどもなくドライブしていると、いつの間にか昼食の時間を過ぎていた。

「なんか食べるかー」

「うん」

「なにがいい?」

「え」

うにゅほが固まる。

「えと、うーと──……」

ああ、これは長考の流れですわ。

「なんでもいいぞ」

「……◯◯は、なにたべたい?」

「そうだなあ」

赤信号で停止し、軽く思案する。

「正直、なんでもいいんだよな」

「わたしも」

「でも、腹は減った」

「わたしも……」

ふたり並んで頭を捻る。

しかし、どうにも決まりそうになかったので、

「……次に見かけた食べ物屋に問答無用で入るってのはどうだろう」

「お」

うにゅほの頭上に「!」がともる。

「いいかも」

「じゃ、決まりだ」

青信号を確認し、アクセルを踏む。

走り出してすぐ、ある看板が目に留まった。

「とんかつかー」

「いいじゃん」

「うん、とんかついい」

というわけで、昼食はとんかつに決定である。

入店すると、テーブル席に通された。

対面のうにゅほにも読めるよう、メニュー表を開く。

「……ちょっと高めだな」

「たかいね……」

店員との距離に気をつけながら、小声で会話を交わす。

「まあ、千円ちょっとなら妥当か」

「そなの?」

「とんかつは、どこもそんなもんだよ」

「へえー……、──ん?」

うにゅほの視線が、ある一点で止まる。

「◯◯、すごいのある」

「すごいの?」

「ほら、これ」

とろ旨ロースかつ 2,289円

「──…………」

「ね?」

「よし、これ行ってみよう」

「うそ!」

自分の声に驚き、うにゅほが口元を押さえる。

「たまにはいいもん食いたいじゃん」

「うん……」

「半分くらい交換してさ」

「……はんぶんずっこする?」

かけそばじゃないんだから。

「うーん、まあ、うーん……」

うにゅほが思い悩んでいるあいだに注文を済ませ、とろ旨ロースかつに舌鼓を打った。

たいへん美味しかったが、うにゅほは値段が気になって仕方がないようだった。

金銭感覚があるのはいいことだけど、逆にちょっと損してる気がする。

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