2014年4月20日(日)
2014年4月20日(日)
買い物のついでに、近所のダイソーに立ち寄った。
「なにかかうの?」
うにゅほが無邪気に尋ねた。
「──……うーん」
「?」
「いや、そう大したものじゃないんだけど」
言いよどむ。
「……毛抜きを買おうと思って」
「けぬき?」
うにゅほが目をしばたたかせる。
「たくさんあるのに」
「うん……」
だから、ちょっと言いにくかったんだよな。
「毛抜きにもいろいろあるんだ」
「ふうん?」
「たとえば──」
陳列棚のフックから、ふたつの異なる毛抜きを手に取った。
「こっちの毛抜きは先が太いだろ」
「ふとい」
「俺の場合、ヒゲを一本一本抜きたいだけだから、こういうのは使いにくい」
「ほー」
うんうんと頷きながら、うにゅほが問う。
「じゃ、こっちのほそいの?」
「どちらかと言えば……」
「だめなの?」
「たぶんこれ、いま使ってるやつだと思うんだよな」
「だめだ」
「いや、そうでもない」
「?」
「いま持ってる毛抜きの先端が潰れてきてる気がするから、買いに来たわけだし」
「そうなんだ」
「だから、この毛抜きでいいんだけど──」
別の商品を取り、うにゅほに手渡す。
「こっちのも気になるなー、と」
「あ、ななめだ」
先端が斜めになっている、百円のわりに高級そうな毛抜きだ。
「すごいぬけそうだ」
「そう思うだろ」
「ちがうの?」
「いや、使った記憶はあるんだけど、使い心地は覚えてない……」
「──…………」
あ、うにゅほが呆れた顔をしている。
「よし、両方買おう」
「もったいない」
「消費税が8%になっただろ」
「うん?」
「百八は煩悩の数なんだ」
「──……?」
うにゅほを煙に巻いて、毛抜きをふたつ購入した。
斜めカットの毛抜きの使い心地は、案の定微妙だった。
いま我が家に何本の毛抜きがあるのか、怖くて数えたくありません。
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