2014年4月19日(土)

2014年4月19日(土)


「──…………」

自分の頬に手を触れる。

熱い、気がする。

「風邪引いたかな……」

「かぜひいてるよ」

「引いてるか」

「うん」

断定されてしまった。

「だって、こえへんだもん」

「変か」

「うん」

軽く咳払いし、口を開いた。

「あー、えー、いー、うー、えー、おー、あー、おー」

喉元を撫でる。

たしかに、かすれている気がする。

「どう?」

「ひくい」

「風邪かな」

「うん」

うにゅほが断言するなら、そうなのだろう。

これでいて、けっこう信頼しているのだ。

うにゅほに指摘されてから自分が風邪だと気づくことも、たまにあるし。

「──…………」

それは、単に俺が鈍いだけか。

「たいおんけい──は、いらない?」

「いらない。あって微熱だろうし、測ったら気が滅入るし」

どてらを着込んで安静にしていれば、そのうち治るだろう。

「……あ、そうだ」

ふと、あることを思い出した。

「俺、風邪を引くと聞きたくなる曲があるんだよ」

「かぜのときだけ?」

「だけじゃないけど、風邪のときが多いかな」

「なんてきょく?」

「たまの、夏の前日って曲」

「……なつじゃないよ?」

「前日だから、夏の曲じゃないんだよ」

「あ、そか」

うんうんと幾度も頷く。

素直すぎて、なんだか騙したような気分にさえなる。

「CDないから、動画サイトで聞くしかないんだけど──」

キーボードを叩き、動画を呼び出すと、特徴的なオルガンの音色がUSBスピーカーから流れ出した。

「──…………」

「──…………」

やがて、再生が終わる。

「……どうだった?」

「なんか、ちょっとこわいきょく」

「あー」

すこしわかる。

「かぜのとき、またききたい」

「でも、風邪には気をつけないと駄目だぞ」

「そだね」

顔を見合わせ、苦笑した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る