2012年5月20日(日)

2012年5月20日(日)


うにゅほの舌は、どちらかと言えば和風寄りである。

どこか非常に微妙な点において和食に傾いていると、俺は感じている。

ショートケーキとまんじゅうであれば、前者を取るだろう。

しかし、それがチーズケーキであった場合、途端にわからなくなる。

すいません例えを間違えました。

それは単に、うにゅほがチーズケーキを食べたとき、反応がいまいちだっただけだ。

つまり、比喩すら難しいほどにセンシティブな問題ということである。

なんとか誤魔化せた。

母親が好んで買ってくるお菓子に「いわしせんべい」なるものがある。

いわしの身に水飴を塗って焼いたような菓子だ。

硬くて甘くてそこそこ美味しい。

これがまたうにゅほの口に合ったらしく、取り分を朱塗りの容器に入れて、カリカリと少しずつ食べている。

一気に食べるより、長く楽しむ。

それがうにゅほのポリシーであるようだ。

日持ちのしないお菓子のときは全力で止めよう。

そんなことを考えながら、ハムスターのようにいわしせんべいを食むうにゅほの姿を眺めていたとき、

「ちゃっ」

と、謎の言葉が発された。

「ちゃ?」

「……んえ」

うにゅほが眉をひそめながら、あかんべえをするように舌を出した。

赤い。

舌を塗り潰すように、更なる赤みが一筋──

「わああ!」

血である。

いわしせんべいで切ったのだ!

そしてうにゅほは、舌から血が垂れそうになっていることに気づいていない。

このままではスカートが汚れると直感した俺は、慌てて左手でティッシュを引き抜き、右手をうにゅほのあごの下に差し出した。

当然、右手にティッシュは持っていない。

間違えた。

血と唾液の混じったなんとも言えない感触が手のひらから伝わってくる。

うにゅほの口を閉じさせて、右手をティッシュで拭った。

「……痛い?」

「ふょっと」

今日はもう食べないほうがいいと告げて、パソコンチェアへ戻った。

どう感じていいものか、いまいち整理のつかない出来事だった。

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