2012年5月19日(土)

2012年5月19日(土)


俺はあまり音楽を聞かない。

「作詞をする人間としてどうか」という意見には、耳を塞いでかぶりを振ろう。

昔からそうなのだから仕方ないではないか。

iPhoneの中身は九割九分がラジオのバックナンバーで、うにゅほが我が家に来て以来それすらまともに聞いていない。

流行曲どころか、好きなアーティストの新譜を漁ることすらなくなった。

作詞参加しているサークルのCDだけを、ただひたすらに回転させる日々である。

そんな毎日に終止符を打ったのが、作業用BGMの存在だ。

俺の作業は文筆が多いため、気を散らすものは厳禁と言える。

テレビ、ラジオは言うに及ばず、Skypeやtwitterクライアントにすら集中を乱される。

唯一うにゅほとの会話にだけは苛立たずに済んでいるが、作業が捗るわけでもない。

なかでも最悪なのが、リビングのテレビである。

薄い壁を挟んで1メートルと離れていないおかげで、パソコンチェアを下りることなく番組の内容まで理解できてしまう。

母よ、どうして俺の聴覚にミュート機能を備えてくれなかったのだ。

そう嘆いてしまうくらい、うるさい。

「なんか、おんがくきくのは?」

軽く愚痴っていると、うにゅほがそう言った。

「いや、俺あんまり音楽聞いてて作業捗ったこと──」

答えながら、考えた。

何故捗らなかったのか。

それは、つい歌詞に意識を持って行かれたからではなかったか。

いやどうだ。

その日の深夜、作業用BGMで検索し、試してみた。

うん。

すげえ捗る。

これまでの自分が馬鹿みたいである。

翌日、うにゅほの髪の毛と耳とのあいだに両手を差し入れて、軽く揺らしながら礼を言った。

うにゅほは目を白黒させていた。

そんなこんなで本日、図書館へ行った際にクラシックのCDを借りてみた。

今日の日記は、それを流しながら書いている。

この感動が伝われば幸いである。

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