2012年5月17日(木)

2012年5月17日(木)


スーパーが特売日だったので、祖母を連れて行った。

近所に大きなスーパーがあるためか、さほど混んでいなかった。

経営者からすれば頭を悩ませる事態かもしれないが、こちらにとっては都合が良い。

祖母は足が悪く、杖がなければまともに歩けない。

店内ではカートを杖がわりにするが、小回りが効かない。

他の客にぶつかる心配が少ないというのは大きな利点と言える。

祖母と買い物に行くことはたびたびあるが、うにゅほと連れ立って、というのはあまりない。

理由は、うにゅほと祖母との不仲にある。

祖母にとってみれば、家族づらをした闖入者に過ぎなかったのだろう。

嫁姑に聞くような陰険なものではないが、戦前生まれだけに言葉がきつい。

うにゅほが怯えて距離を取り、それがまた祖母の癇に障る。

悪循環が起こっているように、見えた。

と言うのも、そういったわだかまりが、いつの間にか解消されていたからだ。

なにがあったのかは知らない。

祖母とうにゅほのあいだに日常会話はないが、過剰な距離もない。

祖母が頼み、うにゅほが取ってくるという、当たり前の光景がそこにある。

「好きなもの、ひとつ持ってき」

祖母が言った。

俺だけでなく、二人に言った。

俺とうにゅほは顔を見合わせ、互いに微笑した。

ここで三百円のマカダミアナッツを選ぶあたり、うにゅほはしたたかだと思った。

ひとつはひとつだもんな。

レジを通り、両手にエコバッグを持った。

祖母は買い物を終えると、疲れて人の手に掴まりたがる。

荷物があるので、一人だと大変だった。

これからは大丈夫だ。

祖母とうにゅほが手を繋いで歩くのを見て、そう思った。

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