2012年4月1日(日)

2012年4月1日(日)


夕食後、チェアでくつろいでいる俺に、うにゅほが近寄ってきた。

背中に隠していた両手を、楽しげな様子で差し出す。

手のひらの上には、以前リサイクルショップで入手した、ゴマフアザラシのぬいぐるみが乗っていた。※1

「おに」

「えっ」

「おにです」

え、なに。

なんなの?

ぬいぐるみの名前?

「お、鬼ですか」

「おにです」

そうか、鬼か。

トラ柄の腰巻とツノをつければ、たしかに鬼かもしれない。

可愛いかもしれない。

可愛いかもしれない、けど。

リアクションに困っていると、うにゅほが言った。

「うそです!」

そこで、ようやく思い出した。

今日はエイプリルフールである。

いやゴマフアザラシのぬいぐるみを差し出されて、それを鬼だと言われたところで、嘘という発想には至らないけれど。

どちらかと言うと、珍言のたぐいだし。

「じゃあ、本当は?」

「たまちゃん」

「……その名前って、誰がつけた?」

「おかあさん」

えらい安直だな。

改めて考えてみると、うにゅほが嘘をついたところなど、見たことがない。

もしかすると、これが出会ってから初めてついた嘘かもしれない。

……うん。


※1 2012年3月19日(月)参照

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