2011年12月6日(火)

2011年12月6日(火)


正午過ぎ、家族で新ドラの映画を見て、うにゅほの機嫌はおおよそ直ったようだった。

人魚大海戦の出来は正直なところ微妙だったが、それは口に出さなかった。

再生前には一メートルほど開いていた距離が、いつの間にかほとんどなくなっていたのだから、ドラえもんさまさまである。

しかし、うにゅほの単純さに甘えてよいものか。

そう考えた俺は、うにゅほに「どこか行きたい場所はある?」と尋ねた。

うにゅほが引きこもり気味なのは、俺に合わせているからかもしれない。

もし行きたい場所があるなら、お詫びもかねて連れて行ってあげようと思ったのだ。

うにゅほはひとしきり頭を悩ませて、

「……ゲームセンター、いってみたい」

と、答えた。

言われてみれば友人とばかりで、うにゅほを連れて行ったことはなかった。

快諾し、車で十分ほどの距離にあるキャッツアイへと向かった。

平日の昼間ということで、人は少ない。

ゲームコーナーをぐるりと回り、メダルコーナーですこし遊んだあと、うにゅほが食いついたのはプライズコーナーだった。

予想通りだったのは景品がぬいぐるみだったことで、予想外だったのは、そのぬいぐるみがけいおんのキャラだったことだ。

うにゅほにけいおんを見せた記憶はないのだが。

ともあれ百円玉を投入して、うにゅほにやり方とコツを説明する。

俺がプレイすれば、最低でも五百円で取れる景品のために、三度ほど札を崩した。

徐々に減っていく財布の中身に、それでも景品を自分で手に入れる喜びを共有したくて、無理に笑顔を浮かべていた。

ようやく景品が取り出し口に落ちたとき、うにゅほと俺はハイタッチをして喜んだ。

そしてうにゅほは、俺に唯のぬいぐるみを差し出し、

「はい、あげる!」

と弾んだ笑顔で言った。

いかにもうにゅほらしい行動に、俺は軽く照れながら「ありがとう。でも、どうしてこれ?」と尋ねた。

俺はけいおんのなかで、唯が一番好きだ。

しかしうにゅほがそれを知っているはずはない。

「タンスのなかに、このこのひぎあ?がたくさんあったから」

ひぎあ。

フィギュア。

俺はゲームセンターで取ったフィギュアを洋服箪笥のなかに隠している。

全十七体のうち、実に五体が唯である。

バレていた。

俺は確実にひきつった笑顔を浮かべ、うにゅほから唯のぬいぐるみを受け取った。

六体目である。

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