第一話 光のはじまり
「……あつい」
今は秋だったはずなのに、暑い……待て、暑い?
「はっ!」
一気に意識が覚醒して、がばりと身を起こす。
……どうやら俺は、砂漠に倒れていたようだ。
「魔法陣なし、人影なし……マジか……」
雹も居るのにイレギュラーな召喚か……と思いかけて、あれ、と思う。
「……
…………返事はない。
というか、あいつは暑いのは苦手だったから、こんな砂漠に居たら一通り愚痴を言って騒いだ後、ぐったりして呻いているはずだ。
去年の夏は正にそんな感じだった。
外に出る度ぐちぐちと暑さに愚痴を零し、しばらくすると呻くだけになり……普段涼しげな顔をしている分、そうやって弱っているのを見るのは少し面白かったので、よく覚えている。
夜になると少しは暑さがマシになる分、元気になってギリギリ外にも出られるらしいのだが……。
と、つらつらとそんなことを考えていたのは、きっと現実逃避だったのだろう。
呼びかけて10秒以内に返事が無かった時点で展開していた探知魔法は、『周囲にヒトは居ない』という結果のまま、いつまで経っても変わらなかった。
――それはつまり、彼とはぐれた、ということで。
「嘘だろ……」
思わず呟いたものの、これが嘘ではないことは分かる。分かってしまう。
以前召喚された世界で大賢者に教わり、世界が違ったとしても通用するだろうと太鼓判を押されたこの魔法は、世界全てをカバーするような範囲はないが、その分正確に周りの様子が分かるようになっている。
その魔法を持ってしても、今、俺の周囲には魔物らしきものはあれど、ヒトはひとりも居ない。
……別の魔法で調べてみると、少し先にそれなりの規模の町があるようなので、そちらに行って改めて探すのがいいだろうか。
しばらくこの場に留まる、というのも少し考えたが……雹だったら、俺が居ないと気づいたら合流しやすいように、生き残れるように町を目指すぐらいはするだろうしな。
「……よし」
まずは、俺の隙を狙って集まって来たサソリっぽい魔物を蹴散らすことから始めようか。
――――――――――
補足コーナー
・光の召喚体質
転移体質ではなく、あくまで召喚体質。
そのため、魔法陣らしきものが近くにあり、術者らしきヒトが側に居る……状況によってはそのどちらかだけという場合もある。
が、大抵の召喚では、魔法陣かヒトは光の近くにある。それが「召喚」の原則条件。
呼ばれないと渡れない、それが光の体質。
だから、「どちらもない」今回の召喚はイレギュラーなのです。
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