伝説の賢者は俺の親友のようです。
ソリィ
第零話 召喚勇者と氷の少年
突然だが。
俺は異世界に行ったことがある。
……これじゃ語弊があるか。――異世界に、何度も何度も行く羽目になっている。
かつて魔王を倒した世界の十年後に召喚されて、今度は国の復興を手伝うことになったり。
国を襲っていた魔物を倒して家に帰れた直後、今度は魔王を殺せと召喚されたり。
中学生になった頃から、ずっと、ずっと。
回数にして20回と少し。
家族はこの体質とも言うべき俺の召喚体質を理解してくれていて、数日失踪したぐらいでは「
それどころか、弟なんかは俺の冒険譚……召喚された先で何をしてきたか、というだけの簡単な報告なのだが、やってることが魔王討伐やら国の復興やらファンタジーなものだから、冒険譚という認識になっているらしい(ぶっちゃけ俺も話しててどこのラノベかと思う)
ただ、この召喚体質を知っているのは家族だけ……今までは、家族だけだった。
「――と、言う訳なんだ。だから魔法陣を見かけたら迷わず逃げてくれ」
そう説明を締めくくって、親友を見つめる。
彼は
他のクラスメイトは俺の男嫌いを理解して、普段は近寄らないようにしてくれているのだが……。雹だけは、するりと俺の内側に入ってきた。そして、そのまま居着いてしまったのだ。
「そっか……じゃあ、」
と、雹が何か言いかけた、その瞬間。
「早速かよ……っ!」
思わず毒づきたくなるタイミングの悪さで、俺の足元に魔法陣が展開した。
「うわ、本当だったんだ……」
魔法陣を見てそう呟いた雹は、逃げるどころか、何故か俺にしがみついてきて。
「っおい! なんで逃げないんだよ、男に抱きつかれても嬉しくねーぞ!?」
彼を引き剥がそうと力を込めても、抵抗が激しく中々離れない。
くそ、なんだかんだ言って力強いなコイツ……!
「君を1人にはしない。逃げろ、とは言われたけど……僕がそれを承諾した覚えはないよ。――
「っ……」
キリリとした顔で離れないと宣言する親友に、息が詰まる。
(ああ、もう)
コイツは、こう言ったからには何をしてでもその約束を守る。
それを今までの経験で知っている俺は、腹を括った。
「言ったからには、守れよ!」
「っ、うん!」
言いながら手を握り返すと、珍しいぐらいの満面の笑みが返って来た。
それになにか反応を返す前に、魔法陣が放つ光が強くなって。
急速に視界が白で塗りつぶされて。
――俺の意識は、暗転した。
――――――――――
補足コーナー
・今作の地球
現代とそう変わらないが、テレポート技術が確立されていたり、部分的にSF的な近未来要素がある。
リアルとの最大の違いは「異能」と呼ばれるファンタジックな能力持ちの人々であり、彼らの手によって発展したのが近未来要素という設定。
異能持ちは主人公(高校2年生)が生まれる少し前から確認されるようになり、発見当初は偏見などの問題もあったが、この頃はなんとか収まってきて、異能持ちと言うだけで奇異の目で見られるような状況ではなくなっている。
この異能は、異世界の魔法とは似ているが違うもの、という立ち位置です。
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