急展開すぎるんだが!?

 ロコはいつでも来いと言わんばかりに手を招いている。

 リリーは金色に輝く剣をかまえ、ロコの隙をうかがう。

「絶対にこいつは渡さないんだから!」

 ロコに向かって剣を振る。

「ほお、よく鍛練しておるな。太刀筋がきれいである」

 ロコはリリーの剣を小指で止めていた。

 嘘だろ! まるで指切りをするみたいにあれを止めるなんて。

「ほんと、いつ見てもバケモノねあんた」

 リリーはそう言ってその場に倒れこむ。

 剣が床に落ち、ガシャンと音をたてる。

 え? 今何をした?

「殺したのか?」

「我は魔人は殺さぬ。魔力切れにしただけだ。我は魔力の完全支配ができるのでな」

「魔力の完全支配?」

「いずれお主にもわかるであろう。魔力のなんたるかを」

 とにかく、俺達では太刀打ちできない相手ということだ。

「あなた、ちょっとこっち見て!」

 エマの方を見ると、急に唇に柔らかい感触がする。

 エマはキスを終えるとその場に倒れこんだ。

「キ、キス。これがキスなのだな」

 ロコが顔を真っ赤にしてこっちを見ている。

「まさか、ロコはキスをしたことがないのか?」

 力はあれどやはりまだ子供のようだ。

 俺もあっちの世界では死ぬまでに経験できるかさえもわからなかったしな。

「な、ない。見るのもはじめてだ。だけど。我だってで、できる」

 明らかに同様しているな。案外かわいい。

「我だって、我だって。はじめてのきすぐらいできる」

 そう言ってロコは俺の方に歩み寄ってくる。

 大丈夫、今の俺なら。

 エマが魔力切れになるまで俺に魔力を注いでくれた。

 ありがとう、エマ。

 人差し指を上にたてる。

「魔力の根源よ主の望みを叶えたまえ 主を全ての天災から守れ ビアラクテア!」

 上に向けた指の上に黄色い球体が現れ、それが広がっていく。

 半透明の黄色の結界に俺は囲まれた。

 エマは結界に触れる。

「我としたことが、この結界を破ることができない。魔力の完全支配はできていないはずなのだがな」

 勝った! エマの想いを無駄にはしなかった。

「開けてくれー。我も、我も、お主ときすがしたい」

 ロコは駄々をこねる子供のようだ。

 ドンドンと結界をたたく。

 なんだ? 魔力感知に新たな魔人の気配を感じる。

 ロコの右に人形の影が現れる。

 影というより暗い灰色の幽霊のようなものだ。

 煙のような灰色の塊がとけ、そこには背の高い魔人が立っていた。

 つばの長い大きなハットを被り、両手は腕から包帯でぐるぐる巻き。黒に金の刺繍 が入った服を着ている。

 服はおそらく一枚で、羽織っているだけなのだろう。

 六つに割れた日に焼けた腹筋が見える。

 なんといっても両目にはそれぞれ眼帯がしてあり、違和感しかない。

 というかあれ見えてないだろう。

 眼帯二個とか見たことない。

「やあ、ロコ、久しぶり。元気にしていたかい?」

「オルソ! 貴様、復活していたのか!」

 ロコは急に戦闘態勢に入った。













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