第137話 もう一度索冥のところへ(1)
しばらくたって、あたしたち3人は
「‥‥‥‥確かに、この呪文例は水の魔法と同一です」
「よく見てみると、金の魔法もありますね」
2人ともそう言ってため息をつきます。どうやら光の魔法の章だと思っていたものは、他の五属性の呪文が混ざっていただけのものだったようです。
「はぁ、この本は偽物だったのですか‥‥やっと実用的な本を見つけたと思ったのですが‥‥」
と肩を落とす
「‥‥この前、図書室で読んだ本と矛盾はしていないのでは」
「えっ」
「いったん本に書いてあったことや
「はい」
「それに、ほら、
子履と任仲虺はしばらく2人で小声で相談していましたが、子履が「‥そうですね、確かに」とうなずきます。
任仲虺は本を開いて、ページをめくって調べています。
「それでは金の魔法が突然使えなくなったのはなぜでしょうか」
「光の魔法にはまだわからないことも多いのですが‥」
あたしはそう前置きした上で、「おそらく‥他にも条件があるのかもしれません。普通の魔法と違って」と付け加えます。
「条件‥ですか」
子履がそうやって考え込むかたわらで、本を読み続けていた任仲虺が提案します。
「
索冥は、1学期に
子履がおそるおそる尋ねます。
「なぜ索冥ですか?」
「
「聞くべきでしょうって、神獣に対してそんな簡単に‥‥」
「
子履はためらう素振りを見せますが、任仲虺は本をまた閉じてテーブルの上に置きます。
「さっと見る限り、五行や
◆ ◆ ◆
今から行くと帰りは深夜になりそうなので、翌日の朝から行くことになりました。
翌日はバイトの予定が入っていたので、まず馬車はそっちに向かいます。あたしがいつもの癖で膝の上に
でも子履はあたしにもたれるまもなく、昨日の本をまだじっくり読んでいます。
「‥仮に光の魔法が五行すべての属性魔法を使えるというだけのものであれば、五行に優越している部分はどこにあるのでしょうか」
「1人で五行を全て扱えるというだけですごいのでは。
「いいえ。実務としてはそれぞれ異なる属性を持った人を5人集めればいいだけです。なぜ黄帝や
「確かに‥」
確かに歴史書では、光の魔法を使って戦争に勝ったなどという記述はありません。光の魔法を積極的に評価する記述もありません。それだけ実際に使う魔法がしょぼかったのでしょうか。
「魔法そのものではないと思いますよ」
と返事するのは任仲虺です。
「光の魔法を操る人は徳にあふれていて、五佐や五獣など、伝説の神々と交流を深めていたそうではないですか。もしそれらの神々と出会う条件が光の魔法の使い手ということであれば、それだけで他の属性を軽く優越します」
などと話しているうちに
◆ ◆ ◆
「本日、急用が入って仕事できません。大変申し訳ございません」
「こちらこそ
お互い深く頭を下げながらやる変な挨拶も終わらせてあたしが店長の部屋から出ると、
テーブル席に戻って子履や任仲虺と会釈して椅子に座ると、子履が食べていた
「これおいしいですよ。食べてみてはどうです」
「はい、喜んで」
とあたしがそれをぱくりと食べます。確かにおいしいです。ふと隣を見ると、任仲虺が何かに呆れたようにため息をついています。
「どうかしましたか、
「いえ‥‥矛盾しているなと‥‥いえ、何でもございません」
「矛盾って、あの本のことですか?」
任仲虺は答えたくなさそうに首を振ります。それ以上聞かないことにします。
食べ終えました。さて馬車に戻りますかと思って外に出ようとすると、いつもの2人とすれ違います。あたしが拝をしようと腰をかがめると、
「お二人様、よくこちらにお通いになりますね」
「庶民の味を知っておくことは民を治めるのに必要なことだ」
「じじい、こう言いながらいつもここに来てまっせ」
「
「はい。文化祭の準備で忙しくなりまして」
子履が答えます。羊玄は「ふうむ‥」とあたしたち4人を一通り眺めてから、もう一度あたしに尋ねます。
「
「いいえ、今日は急用が入ったのでお休みさせていただいてます」
「急用?何のだ?差し支えなければ教えてくれぬか」
やっと足の腫れが引いたのか、向こうの方で「えーっ、今日いないのかよ」という公孫猇の大声が聞こえます。羊玄は「お前は黙れ」と怒鳴りつけています。
「はい。東へ行って、
そこまで言いかけると、いきなり子履が腕をあたしの肘に絡めて思いっきり引っ張ってきます。
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