第130話 光の魔法の本を探しました
さて、それはさておき、魔法の使えなくなった
本棚もばかでかいものが壁を覆い、そして読書用のテーブルを隔てて向こう側にもいくつも並んでいます。市民向けの図書館と言われても信じるレベルです。
「どうしたのですか、
子履が、やたらあくびする
「不眠なら
「‥‥‥‥薬で努力します」
うわ、子履は漢方薬の名前にも詳しいんですね‥‥確かそういう薬は前世にもありましたよね。中国の古い時代の薬が今も残っているのはすごいと思います。と思ったら、子履の後ろにいる
「薬にお詳しいようですが、知り合いに医者でも?」
「あ‥そのようなものです」
わざとらしくごまかしてます。うわ、あぶなっかしいです。
推移はあたしたちとはあまり仲良くないと思っていたのですが、たまたま調べ物があったらしく廊下でばたりと出会って一緒に図書室に入ることになりました。
◆ ◆ ◆
あちこちの本棚から、それっぽい本を集めます。
あたし、子履、任仲虺、妺喜の4人で広大な図書室を探し回るのですから、なかなか大変です。こうなることは分かっていたので
1階の大きなテーブルの一角に集合して、本を並べます。本を集めた後は、中身を読んで情報を整理する作業が待っています。午前から来てよかったです。昼食には2人ずつ交代で行くことになっています。
あたしたちはとにかく本の中を探しまくります。ページをばらばらめくってそれらしい記述を探しますが、光の魔法は前例が少ないらしく、なかなか見つかりません。
任仲虺、妺喜が昼食に行ってしまって、向こうに推移の姿が見えるとはいえほぼ2人きりになった図書室で、向かいの席の子履を見ると、紙に本の中身を転写しています。紙がけっこう埋まっています。あたしの紙にはほとんど何も書かれていませんから、子履の本には記述が多いということでしょう。
あたしも記述を探して、いくらか転写したところで任仲虺と妺喜が戻ってきたので、子履とそろって昼食に行くことになりました。
「光の魔法は記述量が少なく、大変です」
寮の食堂でピザとサラダを食べながら、子履がため息をつきます。
「光の魔法が使える人は数えるしかいませんからね」
「ああ、それなんですが、気になる記述を見つけました。『光の魔法は時に他の属性に擬態することがあり、みずからの真の属性に気づかないまま生涯を終える人も多いと思われる』と」
「他の属性に擬態‥‥そんなことがあるんですね。どうりで情報が少ないわけです」
基本、5つある属性において、他の属性魔法と重複するようなものはないはずです。しかし光が他の属性と重複するなんて、一体どういうことなんでしょうか。
「履様の読んだ本で、光の魔法でできることについて書かれてなかったですか?」
「それは分かりません」
「ますますわからないじゃないですか。他の属性に擬態するんだったら、五行の中のどれを試してもダメじゃん、他の属性との見分け方が分からないと区別できないですよ。もしかしたら最初から金の属性が使えなくなっただけかも‥」
「そうですね‥‥」
その資料をこれから探さなければいけません。あたしたちにできるのでしょうか。
「
「そうですね」
昼食を食べ終わるとすぐに職員室に走っていきます。
◆ ◆ ◆
「私もよく分からないですね」
職員室で、務光先生は読んでいた本をばたんと閉じると、首を振ります。ちらっと表紙を覗いてみると水色だったので例の本とは別物のようでした。
「光の魔法は過去に判明している使い手が2人しかなく、五帝の中でも帝
子履は「そんな‥‥」と肩を落とします。‥‥そういえば、妺喜は闇の魔法にわりと手慣れていますが、闇も使い手は確か少なかったんですよね。
「妺喜が‥
「私の想像ですが、闇の魔法でしたら、民衆に直接危害がくわえられるので具体的な被害の記録は克明に残るでしょう。しかし光の魔法は中身よりも民を救ったという事実に重きが置かれるので、記録されにくい、または抽象的な説明しかできないような魔法であると考えます。特に
「な‥なら、光の魔法と他の属性を区別する方法は?」
「分かりません。私もこれくらいしか言えません」
そう言って務光先生は首を振ります。あたしと子履はお互いの顔を見合わせます。
◆ ◆ ◆
廊下を歩きながら、あたしはひとぎわ力の入った声で子履に尋ねます。
「履様は最初、自分を金属性だと思ったんですよね」
「はい」
「光の属性は、他の属性と混合されやすいと本にも書いてあったし、先生もそうおっしゃっていましたね」
「はい」
「あたし、履様の属性は光だと思います」
「その可能性は私も感じていますが‥‥私は五行の属性魔法を全て試してすべて失敗したのですから、光の魔法には何か特別な発動条件や呪文があるかもしれません‥」
「あっ‥そうか、そうですね」
自信なさげに、ただ呆然と前を眺めているだけの子履を見て、あたしはそのあとにつける言葉が見つかりませんでした。
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