第101話 務光と卞隨の報告
★小難しいことを書いてますがノリで適当に書いてるだけなのであまり気にしないでください。
「
「はい、今のところございません」
「まったく、数百年に一度の使い手だというに、陛下は危機感がなさすぎる。せめて蒙山と国交を深めるべきだ」
羊玄は誰に向けたわけでもなくぼやきます。「お気持ち、お察しいたします」と務光先生も苦々しい表情で、小さめの声で返事します。
「ところで、本題は何じゃ?
「はい。
務光先生はそう言ってから、ちらちらと部屋の周りを一通り確認して、間を置いてから話し始めます。
「彼女の属性は
その一言に、羊玄は表情をこわばらせます。椅子の下の2人から見ても分かりやすいくらい、脚が震えていました。
「何か根拠はあるのか?」
「はい。神獣・
羊玄は一度腰を浮かせかけましたが、ため息をついてもう一度椅子にもたれます。がたたという音が立ちます。
「いかがいたしますか。子履をここへ召し出しますか?」
「‥‥いや、放っておけ。わしらがより多くの徳を積めば済む話だ。他に言うことはないか?」
「特には」
「下がりなさい」
2人は深く頭を下げてから立ち上がり、その接客室を後にします。羊玄はもう一度ふうっとため息をつくと、「誰か!」と言ってコップを持ったような形に指を曲げて手を振ります。すぐに使用人が走ってきて、水を持ってきます。小さいテーブルも運ばれてきました。
水を一口飲んで小さいテーブルに置くと、使用人がなくなってまた部屋に1人きりになった羊玄は、窓の外の青空を眺めます。
光の魔法の使い手は、過去に数えるほどしかいません。
このほかにも光の魔法の使い手とされる人間は何人かいますが、とりわけ上の2人は、この中華の統治に大きい変革をもたらした点から、注目に値します。果たして子履もまた、この中華に史上初の何かをもたらすのか、それとも”その他大勢”でしかないのでしょうか。
妺喜と同じく殺したほうが都合がいいかもしれませんが、仮にも子履は商伯
「時間がない」
そうつぶやくとコップの水を一気に飲んで空にし、椅子から立ち上がって部屋を出ていきました。
◆ ◆ ◆
さて当の子履ですが、あたしを従えて
「
あたしがぼやくように天井を仰いで言うと、子履は紅茶を上品に飲んで、それからにっこりほほえみます。
「私が歴史通りに戦争を起こしたなら、それは史上初の革命(※ここでは単に王朝が変わること)になります。確かに黄帝は
ほほえんでいたはずの子履はいつの間にか紅茶のカップを強く握って、その水面を鋭い瞳で見つめていました。
「中国では何度も戦争が起き、数え切れないほどの血が流されてきました。当然、人民が戦争を嫌うのはいつの時代も変わりありません。しかし時の統治者は例外なく、前例があったことを理由の1つに数えて武力革命を正当化しました。その端緒が私になるのです。この世界に概念というものを与え、形式を確立して後世に大きな影響を与えたのは私の他に
子履は想像以上に戦争を重く考えているようです。そりゃあたしも前世で太平洋戦争に従事したお年寄りから戦争の話を幾度も聞かされています。戦争は大嫌いですし、戦争のない世界が一番です。‥‥ですが、子履の話を聞くたびに、ひとしきりの、とりとめのない不安が頭をよぎるのです。
そんなにうまくいくのでしょうか?と‥‥。
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