第184話 原罪

―イーゴリ視点―


 ここはギルド協会本部。地下情報統制室。

 世紀の決戦の裏で、情報局員もまた戦っていた。


「局長、突入部隊が会敵します」

「構わん。無力化しろ。伝説級冒険者同士の模擬戦しか世界は注目していない。今がチャンスだ」


「第2小隊。機関部制圧」

「第3小隊。プロメテウスへ到達」

 

 ついにたどり着いたな。列強国がひたすらに隠していた世界の暗部に……


「ヘーパイストスの鍵の準備はできているのか」

「はい、局長。辺境伯様より秘密裏に確保してもらっています」


 激動の1年。マッシリア王国のクーデター事件の混乱の裏で私たち情報局員は世界の真実にたどり着いていた。王宮の地下室にあった秘密の小部屋。そこに厳重に封印された地図があったんだ。


 暗号名"プロメテウス"。南大陸近くにある孤島にある遺跡だ。大貴族や王族だけしか場所を知らない世界最高機密。


 その遺跡の奥深くに"プロメテウス"は存在している。

 貴族だけが持つ鍵を使わなければ開くことができないブラックボックス。あのクーデター事件がなければギルド協会ですらその存在は把握できなかっただろうな。


 貴族たちがここまで大げさに遺跡の存在を隠すということは、我らが求めている失われた歴史の手がかりがあるはずだ。


 これは会長にも連絡していない極秘作戦だ。真実は、副会長だけが知っている。


「よし、扉を開け。突撃だ」


 真実へとたどり着くための扉はゆっくりと開いていく。高価な魔力石を使って実行部隊からはリアルタイムに映像が送られてきている。


 だが、その扉を開くと驚くべき結果が届けられる。


「<ダメです。魔力指数が反転しています>」


「実行部隊の計器異常ではないのか」


「<持ち込んだ計器すべてが同じ数値を示しています>」


「なんだと!!」


 魔力指数の反転。ありえないものだ。この部屋の中では魔力自体が存在しないのか。それとも神のルールからも外れた場所なのか。


「<見たこともない建物があります。生物は確認できません>」


 そこには高く積み上げられたような建築物と赭土しゃどのように赤い土。

 見たこともないような施設もたくさんある。


 やはりここがすべての始まりの場所か。壊滅した古代魔力都市の残骸だ。

 

「<なにかこっちに来ます。すさまじい魔力の流れが……>」


 黒い羽根を持ったひとりの人間が突入部隊に近づいてくる。


「やっとたどり着いたのね。でも、ここは原罪の土地。そして、すべての歴史が始まったグランドゼロ爆心地。あなたがたが来ていい場所じゃない」


 まさか……


 死んだはずの賢者・エレンがそこにはいた。


――――

(作者)


椛みさか・睡鬼さんから素敵なレビューをいただきました!

本当にありがとうございますm(__)m

完結まで頑張っていきます!

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