第185話 婚約者同士のイチャイチャ
「綺麗ですね、先輩が選んでくれた指輪」
ナターシャは夕日に向けてさっき買ったばかりの指輪をかざしている。
永遠を象徴するダイヤが
「喜んでもらえてよかったよ」
「喜ばない人がいませんよ。世界で一番好きな人に気持ちをもらえたんですからね」
「初めてのプレゼントが指輪って少し重いかな?」
「そうですね。でも、初めてのプレゼントじゃないですよ? 私はずっとあなたに助けてもらっていました。最初は学園時代の試験の時ですね。遭難しそうになった私を助けてくれて、人間が持つ善意というものを教えてくれました。私が家族との関係をきちんと結びなおせたのもあなたのおかげなんですよ? 私の人生を変えてくれた最高のプレゼントです」
※
「かわいい後輩が、ひとりで世界に絶望している。そんなやつに世界の温もりみたいなものを知ってほしいじゃないかよ! おまえの生きている世界は捨てたもんじゃないって…… 気がついてほしいだろ! それを教えてやるのも先輩の務めじゃねぇか!」
「どうして! こんな生意気な後輩のために、命をかけるんですか? 自分の命を投げだそうとしちゃうんですか? 馬鹿ですよ、あなたは!! 大馬鹿です!!!」
「ナターシャを助けたかったから。かわいい後輩が大変なときに、俺は黙って見ているなんてできない」
「カッコつけないでください!! 今、治癒魔法を!」
「かわいい後輩を助けるためなら、男はどんな無理でもしちゃうんだよ。だから、泣くな、ナターシャ! もうすぐ、ニコライたちが先生を呼んで来てくれて助けに来てくれるからさ」
※
「今思うととんでもないことを口走っていたよな、俺」
「そうですよ。もうほとんど告白でしたよ?」
「やばい黒歴史かも」
「そうですか。すごくかっこよかったですよ。私と先輩しかいなかったんだから、私がかっこよかったと言えばかっこよかったんです。それでいいじゃないですか」
「うん」
「自分で私をあんな風に口説いていて、私が本当に好きになったら生殺しってひどすぎませんか?」
「あっ……」
「ずっと待たされちゃいましたからね」
「ごめん。だから、あんまりからかわないでください」
「わかりました。じゃあひとつだけ約束してくれれば許してあげます」
「うん、なんでも約束する」
ナターシャの眼はうるんでいる。薄暮の海岸で俺たちは見つめ合った。
「私を待たせた分だけ、私を幸せにしてくださいね?」
それについてはもう覚悟が決まっている。
「ああ、もちろんだ。愛してるよ、ナターシャ」
「ありがとうございます」
俺たちはゆっくりと口づけをする。
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