第182話 帰り道
「お疲れ様でした、先輩。これでまた明日の新聞も一面ですね」
俺たちはコロシアムから帰っている。
会場は騒然となっていた。
1世紀にも及ぶ不敗神話の崩壊。会長という怪物を俺は倒したんだな。
まだ、実感はないけどさ。
「魔王軍最強の怪物ハデスと人類最強の男を連続で倒せるなんて運が良かったとしか……上出来すぎるよ」
「実力ですよ。もうあなたを器用貧乏なんて言うひとはいませんから。人類・魔王軍双方の最高戦力を連続で撃破した先輩の実績はもうゆるぎません。さらに古代魔力、ダブルマジック、無詠唱魔力、そしてオリジナルのカウンター魔力に加えて伝説の名剣2本を所有。おとぎ話の英雄みたいに属性てんこ盛りですよ。まさに正真正銘の伝説級冒険者です。私もさっき記者さんに囲まれて大変だったんですから」
「そりゃあ悪かったな。どんなことを聞かれたんだ?」
「『あなたの婚約者とは普段どんな話をするんですか?』とか『アレク氏は史上最強の冒険者だと思いますか?』とか『おふたりの馴れ初めを教えてください』とかですかね」
「ずいぶんとゴシップネタだな。それは……」
「ちゃんと答えておいたから明日の朝刊を楽しみにしていてくださいね」
「なんか怖いな」
俺たちは馬車で黄昏時の田舎道を進む。もうすぐイブラルタルだ。今日はナターシャの部屋で寝ることになるな。
「先輩は世界最強の人間になっても自己評価が低めですよね。もっと自信を持ってくださいね。そうしないと私たちがわびしくなりますから」
「注意するよ」
さすがに全力の模擬戦だったから疲れたな。でも、今日はこれで終わりにしたくない。たまにはナターシャにお礼をしたいから。
また村に戻れば仕事で忙しくなる。こんなふうにゆっくり馬車でのデートなんていつできるかわからないし……
「今日は疲れたからイブラルタルの部屋で寝ちゃいましょう。先輩なんて全力の戦いで魔力も使い果たしているしベッドに潜ったらすぐに夢の世界ですよ。スープくらいは作りますからね」
「うん、でもさナターシャ。イブラルタルについたら買い物したいんだよね。一件だけ付き合ってくれないかな?」
「いいですよ。本屋ですか? それとも雑貨屋? 剣の手入れでもしていくんですか?」
「ううん違うよ」
「じゃあどこに行きたいんですか?」
「宝石ショップ」
「魔導道具でも買いに?」
「いやぁ」
「??」
「
「ふぇ?」
いつも冷静な彼女は目を点にして驚いていた。
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