第175話 史上最年少の伝説
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―テルミドール580年5月8日 イブラルタル通信―
魔王軍最高幹部の災厄の王ハデス討伐に成功!!
ギルド協会本部は、昨日深夜、アレク官房長が率いる部隊が、ゴンケルクにおいて魔王軍西方師団残党のせん滅に成功したと発表した。これによって、魔王軍は、人間居住地域における最後の戦力を喪失した。
また、戦闘最終盤において、S級冒険者序列1位のアレク官房長と西方師団残党を率いていた魔王軍最高幹部ハデスが激突。
激戦の末、アレク氏がハデスを討伐した。
ギルド協会ミハイル副会長は「戦闘の終結」と人類が魔王軍に勝利したと宣言している。
西方師団とハデスの壊滅によって、魔王軍との戦争も新しい局面に突入するとみられる。
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「歴史的な偉業! ハデス落ちる」
「数百年ぶりに魔王軍最高幹部の撃破に成功」
「新しい伝説の誕生」
俺は、寝ている間の新聞を見せてもらっていたが、お祭り騒ぎだ。
「すごいですね、先輩!! みんな先輩のことを誉めていますよ」
「うん、我ながらすごいことをしでかした感がするよ」
「それはそうですよ。魔王軍最高幹部の撃破は、会長が達成して以来の偉業ですからね!」
「俺でいいのかって思うときはある」
「それは謙虚さというよりも卑屈ですよ」
そう言って俺たちは笑いあう。ぶっちゃけると、戦闘中はほとんどナターシャのことしか考えていなかったからな、俺。
それで偉業達成してしまった。恥ずかしいから黙っていよう。
「そして、たった今連絡が入りましたよ」
「うん?」
「おめでとうございます。
他人行儀な声でナターシャは俺を祝福する。
俺たちの夢がかなった瞬間だった。
「ありがとう、ナターシャ。やっと夢がかなったな」
「はい、私達の夢がかないました。ずっと、ずっと、この瞬間を待っていたんですよ。何年も、ずっと」
そう言ってナターシャは、俺の唇にキスをする。
1分間、俺たちは幸せを共有する。その短くも永遠に思えるほど、大事な時間がずっと流れていく。
「今日、何回目ですかね、キスするの?」
「たくさんしすぎておぼえていないよ」
「でも、悪くないですよ。ずっとずっと、我慢していたんだから」
そう言って俺たちは恥ずかしくなって照れ笑いした。
「そう言えば、これが伝説級冒険者昇進の号外らしいですよ。協会の人が一緒に届けてくれました」
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―テルミドール580年5月10日 イブラルタル通信(号外)―
アレク氏、伝説級冒険者に正式昇進
ギルド協会は10日、最高幹部及びS級冒険者会議を開き、魔王軍最高幹部を討伐したアレク氏を伝説級冒険者に昇進させることを全会一致で可決した。
存命のまま伝説級冒険者に昇進するのは、史上4人目。
また、22歳の伝説級冒険者は、ギルド協会史上最年少の快挙である。
これでアレク氏は、S級冒険者昇進・ギルド協会最高幹部就任・伝説級冒険者昇進の3分野での史上最年少記録を達成したことになる
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