第174話 伝説の誕生

―ギルド協会本部―


「それでは、本人は療養中ですが、ここでアレク官房長の伝説級冒険者への昇進について議論したいと思います」


 私は、ギルド協会幹部とS級冒険者を集めて、決議する。


「副会長、ここにいる誰が、アレクの昇進について反対する人がいると思いますか?」

 ボリス君が、そう言って笑うと、会場の皆が同意するように笑いだした。


 まあ、それもそうだろうな。反対する者なんていない。すでに、列強国の国王たちからも推薦状が何枚も提出されている。スポンサーからこのような熱烈な支持がある以上、もうなにも障害はないんだ。


 最高幹部の撃破。それも、魔王軍の力の象徴であった災厄の王ハデスの討伐成功という揺るがない実績まである。


「まぁ、形式上だとは思う。だが、今回の昇進が成立したら、間違いなく歴史に残る。史上最年少かつ歴史上4人目の伝説級冒険者の誕生だ。キミたちの名前も議事録に永遠に残る。覚悟しておいてくれ」


「……」


「まずは、アレク官房長の今までの実績だ。ゾーク西方師団長、クラーケン魔王艦隊司令、ヴァンパイア特戦群長といった魔王軍幹部3体の撃破において、中心的な役割を果たした。また、テロ組織・邪龍教団が起こした邪龍復活騒動やマッシリア王国クーデターを現場のトップとして制圧し、教団を壊滅させた。南海戦争やクーデター騒動時に、魔王軍最高幹部のリヴァイアサン魔王軍総司令や大悪魔メフィストと互角に戦いそれを退けた。そして、今回のゴンケルクにおいて、魔王軍最高戦力である災厄の王ハデスを一騎討ちの末、打ち破った」

 言っているだけで、とんでもない実績ばかりだ。

 普通の冒険者はどれかひとつこなしただけで、S級に簡単に昇進できる。


 S級冒険者が生涯で作る実績を、何人分も作ってしまった。


「立派な成績だ。すでに、実績だけなら、会長にすら届いている」

「伝説級冒険者の昇進条件は、魔王軍最高幹部もしくは魔王の分身の討伐及びそれに準ずるもの。資格的に十分すぎます」

「むしろ、この成績で、昇進を見送ったら、後世の歴史家に何と書かれるかわかったもんじゃないでしょうね」

「ああ、歴史上の汚点になる」


 もう決まっているからな。みんなも納得してくれている。


「それでは、決議を取ろう。アレク官房長の伝説級冒険者昇進について、反対の者はいらっしゃいますか?」


「「「異議なし」」」


「賛成多数で、アレク官房長の昇進について可決します」

 私の宣言によって、会場は拍手に包まれる。


 ここで正式に、4人目の生ける伝説リビング・レジェンドが誕生した。

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