第63話 決闘!
ナターシャとのデートが終わった次の日。
明日の朝に俺たちは西の大陸に帰る。
今日が東の大陸最終日だ。
とりあえず、いろいろありすぎて、今日はゴロゴロしたい。昨日のデートで観光名所も行き尽くしたし、お昼に美味しいものを食べに行きたいくらいだ。ボリスでも誘って、男ふたりで昼から酒を飲むのも悪くない。
この大陸では、ライスを使っていくつもの酒がつくられている。なので、いろいろと飲み比べるのも悪くない。
とりあえず、昼前までは惰眠を貪ろう。
そう思って、俺は二度寝を……
しようと思ったがなぜだか眠れなかった。
なぜだか、昨日のことを思い出してしまう。
※
「ちょっと、先輩の口からそんなストレートな褒め言葉出てくると、こっちまで恥ずかしくなっちゃいますね」
「でも、そう考えると、私は今まで頑張ってきてよかったと思うんですよ。大好きな人と、こうして同じ時間を共有できるのって、最高に幸せですからね!!」
「今、間接キスしちゃいましたね、私たち?」
「でも、私はあなたの発想力に勝てないんですよ? 私はしょせん、すでに世界にあるものを知っているだけにしか過ぎないんです。先輩みたいに、ゼロから何かを創り出すことはできないんですよ、私?」
「
「私の家族に、ちゃんと挨拶してくれますか、先輩?」
※
ナターシャの横顔。笑った顔。美味しそうにご飯を食べていた顔。あーんをしながら緊張していた顔。美術館で珍しいものに見とれていた顔。
いろんな彼女の顔を思い出してしまう。
やばい、これは重症だ。
かなり意識してしまっている。ナターシャは、今頃なにしているだろうか?
たしか、今日はマリアさんとお茶をしに行くと言っていた。女の子は、本当にお茶が好きだよな。
時計を見た。まだ、お昼までには2時間くらいある。
しょうがないから、ボリスでも誘うか。あいつは早起きだから、いつものようにランニングや剣の鍛錬をしているはずだ。
なんだかんだで、すげぇまじめだからな。ボリスって……
※
宿の外で、ボリスは剣を振るっていた。
さすがは、白兵戦で世界最強の男だ。俺も接近されてしまえば、ひとたまりもない。
光の魔術やオルガノンの裁きのような特殊技能を抜きにすれば、最強は間違いなくこの王子様だ。
「おう、アレク! 久しぶりに、やるか?」
俺に木刀を手渡して、ボリスは笑った。こいつと練習するのは、数ヶ月ぶりだな。ぼこぼこにされるのは、覚悟しなくてはいけない。
「ああ、稽古をつけてくれよ! 負けた方が昼を奢るでいいか、親友!」
「いいね! 本気でやろうぜ!」
これは剣術の練習試合。よって、魔法が発動できない距離感で、戦いが始まる。
さすがに正面から斬り合えば、間違いなくボコボコにされる。
よって、俺はニコライやボリスに少しでも対抗するために、編み出したカウンターを中心に狙う。
「いくぞ、アレク!!」
すさまじいスピードで、距離を詰められる。俺は、ボリスの癖を考えて、体の重心をずらしておく。これであいつの攻撃をかわせるはず。
ボリスの木刀は、俺の顔面をかすめていく。おい、当たったらどうするんだよ!
反動は激しいはずなのに、ボリスはすぐに体勢をを整え直して、俺のカウンターを
ボリスは、一撃の攻撃力が高い。下手に斬り合いを挑めば、すぐに打ち負けてしまう。だから、かわし続けて、チャンスを見つけるしかない。
たぶん、時間にして、数分だが、俺たちの剣技の応酬が続く。いつの間にかギャラリーができていた。
「おい、あれはアレク官房長だろ! ギルド協会ナンバー3の!」
「すげぇ。生で最強クラスのひとの試合見れるなんて感動。でも、押し負けているんじゃないか? 誰だよ、あいつ?」
「って、あれもS級冒険者のボリスさんじゃん! 勇者パーティーで、世界最強の戦士。接近戦では、あの人に勝てるひといないって噂じゃん」
「なんだよ、ギルド協会最高幹部対世界最強の剣豪って、どんな豪華な野良試合だよ」
「さすがのアレクさんも、魔法禁止の剣術勝負じゃ、ボリスさんには押されちゃうよな」
「むしろ、数分間でも、ボリスさんと相手できること自体がすごすぎる」
「並みの冒険者でも1対1なら数秒ももたないよ」
「A級上位すら、ソロ勝負なら1分もちこたえたら褒められるって言うからな。ふたりとも5分は勝負しているから、人外過ぎる」
「アレクさん、どうしてあの早さの剣術をよけられるんだよ。さすがは世界最強戦力だ。戦士でも最強クラスって本当なんだな」
「これで光の魔術と世界ランク2位の魔力持ちとか、強すぎるっしょ」
ギャラリーが、盛り上がっているが、俺はもうヘトヘトだった。
ボリスもわずかに動きが鈍くなっている。
ここが最後のチャンス。
俺はボリスの一刀をジャンプしてかわすと、カウンター攻撃をお見舞いした。
「計画通りだよ、アレク!」
「(しまった、つかまされた)」
このカウンターはボリスに誘発された形になってしまった。
つまり、カウンターのカウンターが俺に襲いかかる。
俺のカウンターは紙一重で防がれてしまう。そして、耳の横にボリスの木刀が止まっていた。風を切る音がした。
こいつが寸止めしてくれなかったら、大けがをするほど、本気の剣技だった。
「さすがだな、ボリス! 参ったよ」
「ここまで粘られたら事実上俺の負けだよ、アレク? 実戦なら間違いなく補助魔法こみでおまえの勝ちだ」
試合が終わった後のあいさつで握手する俺たちは、観衆たちからの拍手に包まれた。
「「「すげぇぇぇぇ」」」
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