第37話 エレン①

―イブラルタル郊外・湖の古塔―


「どうして、私がこんなところに幽閉されなくちゃいけないのよ!!マジでムカつく。ありえない、私は賢者序列1位の大賢者なのにぃ」

 ギルド協会によって、私はあの決闘の後、湖に浮かぶ塔に幽閉された。決定的な証拠は、アレクが持っている映像しかないはずなのにぃ。こんな非人道的行為許されるわけがない。


 ※


「あなたは、勇者ニコライを扇動して、アレク氏の命を狙った疑いがあります」


「証拠はあるの~?いくらギルド協会でも、証拠がなければ、私の逮捕は誤認逮捕。賢者序列1位の私が抗議したら、大問題になる。副会長のあんたの首なんてすぐに吹っ飛ぶわ」


「でしょうね。あなたのような人がそんなに簡単に証拠を残すとは、思いません」


「なら、早く私を釈放することね。こんな対魔法防御がしっかりした場所に幽閉するなんて、私のことを随分と恐れているみたいだし!今なら、大ごとにはしないから!」


「それはできません」


「どうしてよ!?」


「すでにギルド最高評議会の許可は下りています。あなたには、があるため、今回は無期限の経過観察措置を取らせていただくことになります」


「はぁ、そんな人権侵害、ありえない!」


「まだ、の重要性を理解できていないようですね?」


「えっ?」


「あなたは、世界最高戦力ニコライとそれに匹敵する戦力アレクを戦わせるように仕向けたのです。状況証拠は整っていますし、あなたの仲間の証言もあります。ここから、あなたが勇者ニコライの好意を利用し、親友二人を対立するように仕向けた。違いますか?」


「断固否定するわ。ありえない。私は、何もしていないわ。あれは、ニコライが勝手にやったこと。パーティーで一番の新参者の私が、リーダーの決定に口出しすることはできない。そんな私が主犯?冤罪えんざいよ!」


「本当に強情な」


「でも、ギルド協会が私を処罰することはできないでしょ?だって、明確な証拠がないから!いいえ、違うわね。あなたたちが明確な証拠を持っていたら、私はすでに処罰されている。そうでしょう?私がここに静かに幽閉されているのが、その証拠よ!」


「わかりました。経過観察措置を延長させていただきます」


「ご自由に!副・会・長・さ・ん!!」


「まさに傾国の美女ですね、あなたは!」


 ※


 今日の取り調べを思いだしただけでも、嫌になる。

 あのアレクっていうムカつく奴をやっと排除して、ニコライと私が世界の英雄になれるところだったのに。本当にムカつく!!


 あいつは、小言が多いし、みんなから信頼されているし、私よりも魔法の才能がある。

 あいつと一緒にいた1年間はひたすらムカついた。まだ、完璧に魔力を使いこなせていなかったから、あそこで叩いて社会的に抹殺しておくはずだったのに……


 そうしなければ、私の地位は完全にあいつに脅かされてしまう。


 ニコライも大事なところで使えない。

 なんで、あそこまで有利だったのに、逆転負けしちゃうのよ!!


 本当にバカばっかりで嫌になる。それにあの副会長は、簡単に篭絡できない。


 だけど、わかったことが3つある。


①ボリスが私たちを裏切ったこと

②アレクが今の世界最高戦力とみなされていること

③私の処罰は、決定的な証拠がないから、ギルド協会といえどもできないということ


 ありがたいことに、時間にまだ余裕はある。

 なら、逆転してしまえばいい。


 今は、じっくりと待つだけ。


 ……


「私はあいつらを絶対に許さない」


―――

氏名:エレン(25歳)

職業:賢者(職業内序列1位)

ギルドスコア:870(S級)


能力


体力:750(世界ランク320位)

魔力:1020(世界ランク1位)

攻撃魔力:1009(世界ランク1位)

治癒魔力:990(世界ランク1位)

補助魔力:1050(世界ランク1位)

魔力防御力:880(世界ランク11位)

総合白兵戦技能:80(世界ランク測定不可)

総合白兵戦防御力:550(同上)

知力:910(世界ランク7位)


総合能力平均値:804


総合能力ランク:19位


判定:S級相当(※冒険者クラス認定は本人の能力以外に実績も反映されるため、この判定はあくまで参考です)


主要実績

・新型のカビを発見し、新薬の製造に成功

・補助魔法と攻撃魔法の可能性を考察する論文で、世界ウィザード賞を最年少受賞

―――

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