第4話 世界ランク2位
レジェンド級冒険者。
それは、S級冒険者でも特に実績を残した選ばれし者だけが、名乗れる称号だ。
軍人なら元帥。
官僚なら終身名誉宰相。
冒険者ならレジェンド級。
この役職が最高の名誉を持つ。
500年の歴史をもつ冒険者ギルドでも、レジェンド級冒険者に任命されたものは、わずか10名足らず。その中でも生きて、称号を授与された人はわずかに3人。他の者たちは、困難なクエストに成功したものの命を落として殉職し、死後の昇進となっている。
レジェンド級に生きて昇進したのは、魔王の分身のひとつを討伐した勇者イール。魔王軍最高幹部の四天王の筆頭であった
俺はこの3人に並ぶために、冒険を始めたはずなのに……
「どうして、ギルドでペーパー試験を受けてるんだよ~」
「先輩、テスト中なんだから、お静かに」
「ごめんなさい」
ギルドの受付で「アレクさん、そういえば、5年に1度は受験しないといけない冒険力判断テストですが、まだ未受講のようですね。いい機会なので、やっていってください」と言われてしまい、「先輩がやるなら私も受けまーす」というナターシャと一緒に受験することになった。
こいつの座学の知識は、半端ないから絶対に負けるの分かっているのに……S級冒険者の威厳が……
※
「それでは、次は攻撃魔法の測定診断です。この魔力測定装置に、手を置いてくださいね」
受付嬢さんは、そう言って機械の説明をしてくれた。これをやるのも久しぶりだ。
俺はゆっくりと手を置く。
そうすると装置が反応し、魔力を数値化してくれることになる。
俺も一応、魔法職よりの人間なので、専門家ほどは高くないが、まあまあの結果が残せるだろう。
少しはナターシャにカッコつけることができればいいのだけど――
0→10→100と数値が上がっていく。だいたい、100で駆け出し黒魔導士レベル。300で中堅。500でベテラン。700でA級黒魔導士クラスで、だいたい世界ランク30位くらいだ。たしか、あの忌々しい女賢者エレンは、1000を少し超えて、世界ランキング1位だったはず。
あいつは、ムカつくがポテンシャルだけは高いんだよな。
俺が目指すのは、700くらい。さっきやったナターシャは、攻撃呪文を専門にしていないのにもかかわらず、650でなかなかの成績だったから、それくらいは抜いておきたい。
よしよし、順調に伸びている。700→800。おお、やっぱり俺、結構、魔力あったんだな。ちょっと安心。これくらいで止まれば、イイ感じだろう。
「おお、さすがは腐ってもS級だな」
「すげー、800超えるのはじめて見たー」
外野も少し騒がしくなってきた。ちょっと恥ずかしいぜ。
「えっ」
受付嬢さんも驚きはじめる。A級最高位に近い900の数字を突破したからだ。
「おい、どこまで上がるんだ? 900超えたら、S級の黒魔導士や賢者と同格じゃねえか」
「やべえよ、あいつ。器用貧乏の代名詞・魔法戦士のくせに、どうしてこんなすごい攻撃魔力を持っているんだ」
「止まるぞ、ランクは何位だよ」
<測定値:990>
「うお~」
その数値を見て歓声が巻き起きた。
「すご~い、アレク先輩、S級の専門家と同格じゃないですか~」
ナターシャも横でテンションが上がっている。
「ランク出るぞ、みんな静かにしろ」
<世界ランキング:2位>
「「「おおおおおおお」」」
「すごいですね、先輩! 世界ランキング2位ですよ! やっぱり天才だったんですね」
「自分でもびっくりしてる。駆け出し冒険者時代に一度、やっただけで、あの時は100少し超えたくらいだったんだけど……」
「じゃあ、成長ですね。やっぱり魔王軍との最前線でずっと死闘を繰り広げていたから、急成長しちゃったんですよ」
「改めて数値化されるとビックリするな。どちらかというと、魔法使い寄りのポジションだったから、こんなに成長したのかもしれない」
「もっと、胸を張ってください。世界ランキング2位なんですから。先輩は、自慢の先輩です」
こいつに少しでもカッコをつけることができて一安心した。ペーパーテストでは勝てないからこういう実技面で結果を残さないといけない先輩が悲しい。
「では、次は白兵戦の技術診断です。こちらの練習魔道具と、練習試合をしますので、アレクさん、よろしくお願いします」
これは、剣速などを測定する試験でニコライが世界ランキング2位で、戦士のボリスが1位だったはずだ。さすがにあの二人に勝てないのはわかってるけど、一応、魔法戦士だからな。少しは爪痕を残したい。
人間を模した魔道具が相手だ。
「S級冒険者のアレクさんなので、魔道具のレベルはマックスにしておきました」
おい、受付嬢ちゃん、あんまりハードルを上げるなよ。俺、どっちかというと魔法使い寄りなんだからな。それに、魔道具レベルマックスって、ほとんどの冒険者が瞬殺されるくらい強くて、王族の護衛とかにも使われている最高のセキュリティじゃん。勝てるかどうかわからないじゃん。
「ソレデハ、マイリマス」
魔道具がしゃべった。おそろしい速さで、魔道具の木刀が俺に襲い掛かる。
「遅い」
しかし、世界ランキングトップ2の剣速になれた俺にはまるで、止まっているように見えた。余裕で受け流し、バランスを崩した魔道具に軽く一撃を叩きこむ。
「マイリマシタ」
「あっけないな、やっぱりどんなに強くても、ニコライたちほどじゃない」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」
外野がすごい盛り上がった。
「えっ? 俺、またなんかしちゃった?」
お決まりのセリフを言ってみる。
「センパイすごいです、あの魔道具の最高レベルは、世界でも10人くらいしか倒せないんですよ~」
「はぁ?」
「つまり先輩は、世界トップクラスの剣士でもあるんですよ」
「うそぉ」
「信じなくても、すぐに診断結果がでますよ~だ」
「シンダンケッカデマシタ」
みんなが固唾を飲んで見守る。
<剣速:910 世界ランク8位>
「おおお~、またランク一桁だ」
<力:850 世界ランク16位>
「ちょっと弱く見えちゃうけどそれでも16位。これで魔法までめっちゃくちゃ強いなんて、なんてチートだよ」
<カウンター技術:960 世界ランク2位>
「おいおい、カウンター技術はあのニコライ超えちゃったぞ」
<剣技:900 世界ランク4位>
「これ、すごくないか?」
<総合白兵戦技能:940 世界ランク3位>
「「「うおおおおおおおお」」」」
「すげーな、やっぱりあのニコライのパーティー、白兵戦技能1~3位まで集まっていたのかよ。どおりで強いわけだ」
「それだけじゃねえぜ、攻撃魔法技術も1位・2位がいたんだ。なんで、アレクさん、クビにしちゃったんだよな。ドリームチームだったのに」
「これで証明できましたね。ニコライさんたちの目が節穴だったってことが」
ナターシャは不敵に笑った。
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