第9話決意

 キキが話したこの話は、ご主人様が見た内容と後日に集めた情報と推測で補完したものらしいが、だいたいこのようなことが起こったらしい。


 俺はその話を聞き終わった後に静かに息を吐き、ゆっくり考え込んでいた。


「君が何かを悩むことはないよ。ただ、スカーレット様には弟様や剣闘剣技会の話をする時には配慮して」


 そう優しく言ったキキは就寝の準備に戻った。




 俺のやるべきこと、俺の価値、俺の仕事、妹のサラ、キキ、ベル、アーネット、弟様、生きる、死ぬ、そして、ご主人様、スカーレット・リファッシュ様。




 ベッドの中でその言葉たちが脳内をグルグルと回った。




***




 それから二週間という期限はあっという間に来て、今、ご主人様に自分の価値を生み出す方法を報告しなければならない。


 俺は食事をする広間でご主人様と同じテーブルで話をしている。背後の壁沿いにはキキ、ベル、アーネットの三人もいる。


「それで貴方の価値の出し方は決まったのね。教えて」


 ご主人様は俺の目を見た。


「はい、決まりました」


 俺は手を強く握りこんだ。




「俺は剣闘剣技会に参加し、"覇者"になります」




 その瞬間、この部屋の温度が急激に下がった気がした。それに後ろに控えている同室の三人は、いつもの無機質な表情をやめてあの部屋で見せる素の表情を出していた。それも今まで見たことのない驚愕という表情を。今まで一緒にこの家で生活と仕事してきたが、あの部屋以外でこの三人が素を見せるのを見たのは初めてだった。


「……どういう意図でそれを選んだの?」


 ご主人様がこれまでに見たことない程感情が無い表情で俺を見ている。俺はゆっくり呼吸して、体中に空気と気合いを入れて話し始めた。


「この二週間の生活を経て、ご主人様がそれを望んでいると思ったからです」


 その言葉から俺がこれまで考えてきたことを話した。

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