第6話奴隷という身分
「まずは聞いてみればいいんじゃないか?」
すべての仕事が終わり部屋に戻ったキキ、ベル、アーネットに相談してみると、ベルがそんなアドバイスをくれた。
「分からないなら素直に聞いてみるのもいいと思うぞ。スカーレット様はそんな事で怒る人じゃないし」
確かにご主人様は聞けば答えてくれそうだ。そこへアーネットが口をはさむ。
「それは悪くないと思うけど、何かしらレン君が出来ることを言えるようにしてから聞いた方がいいんじゃないかしら? スカーレット様に考えさせる手間を省かないと」
まあ、相手の事を考えるならそうだろう。それをご主人様が求めているのかもしれない。そこへさらにキキも混ざる。
「それも含めて君が考えて決める」
「それはそうなんだけどよー、考えんの難しいじゃんか。キキは冷たいなー」
ベルが少し不満そうにそう言った。
「いや、確かにキキが言っていることは俺も正しいと思う。ありがとな、ベル」
三人の言葉に胸が少し暖かくなった。今まで一方的に指示されるか、一方的に頼られることが多かったからこういう風に同じ目線で相談できるのが新鮮で嬉しい。
結局すぐには明確な答えはでなかった。それでも少しだけ気持ちが晴れた気がした。
***
「……それで、自分の出せる価値を決めるために、まずはこの屋敷内で家事掃除炊事からすべての事をさせて欲しいと」
翌日の午前中、俺はご主人様の前で頭を下げながらそのお願いをしていた。
「はい、なんでもやり切ります。どうか二週間、この屋敷で働きながら価値を考える時間をください」
その俺の言葉を聞いたご主人様は心の奥底まで透かして見ているような視線を俺に向けた。
「なぜ二週間も必要なの?」
「一週間でご主人様の事を知り、一週間でご主人様にとって価値があるものを見つけ出すためです」
ご主人はゆっくりと目をつむり、何かを考えているようだ。
「……いいわ。では二週間後に貴方が見つけ出した私にとって価値があるものを聞きましょう」
許可を得られて少し安心して、緊張していた気持ちが緩んだ。なんとかまずは最初の交渉が上手くいって、早速行動を起こそうとしていた俺の心をご主人様は再度縛りつける。
「ただし、二週間後、もし貴方が価値のあるものを見いだせなかったら、貴方を売るわ」
体に再び緊張が走り、自分の立場と境遇を改めて思い出す。
自分は売られてここに居る。それは家族が行った結果だから受け入れるしかない。ただ、ご主人様に拾ってもらったのは本当に不幸中の幸い、いや、幸運といったところだろう。
食事・睡眠を十分にもらい、暴力にさらされることもなく、体も綺麗にさせてもらえる環境がある。普通であれば奴隷にはそんな環境など与えられなく、劣悪な環境でなんとか生きていくしかない。ここは特別な環境である。
だからこそ、俺はご主人様にとって価値があることを証明しなければならない。ここからが本番だ。
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