磨き上げられたグラスの底に月が沈んでいた

舌先にぴりりと刺激が残る。磨き上げられたグラスの底に月が沈んでいた。翳りを帯びた月は、ほんのりと苦い。

「お前には、まだ早いよ」

兄は弟からグラスを取ると、月あかりを飲みほした。

「……満月ってどんな味」

カタログを眺めても、品切れの文字が並んでいる。

「三日月に慣れたら、教えてやる」


2023/3/11

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