僕に、“弟”なんていない。……いるはずがない

記憶のかけらがこぼれおちる。薬が足りない。星の声はとどかない。少年の手が、寄り添うぬくもりを振り払う。

「……兄さん」

少年を“兄”と呼ぶ幼子に見覚えはなかった。

「君は、」

「どうしたの。僕だよ」

「……お前は、誰だ」

淡いすみれ色の瞳が揺れる。

「僕に、“弟”なんていない。……いるはずがない」


2022/8/27

星満つるギムナジウム

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