本当に、いなくなってしまうんだね

洋燈のあかりが揺れる。シキは微かな音をとらえ、扉の鍵をあけた。

「シェーブル」

「よくわかったな」

「足音でわかる。君のことだから」

人形師の旅立ちの日が近づいている。シェーブルは旅に同行する技師のひとりだ。

「船の修理が終わったときいたよ」

「楽しみだ」

「本当に、いなくなってしまうんだね」


2022/2/19

鉱玉標本録

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