僕がいなくなっても、泣かないでね
やわらかな栗色の髪に指を絡め、弟が口端をあげる。
「にいさん、泣いていたでしょう」
新月の夜は不安定になる。歯止めがきかないのはお互い様だ。
「……僕がいなくなっても、泣かないでね」
「何を言っている」
榛の睛が黒曜石の影をとらえる。
「俺が、お前を離すと思うのか」
「……僕の手を離さないで」
2021/12/16
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