月食堂掌編録

聖河リョウ

君、運がいいね。其れは月世界から入荷した新商品さ

形のよい指先が夜天色の表紙を開く。"掌編録"と刻まれているのに、白紙の頁が続いている。

「君、運がいいね。其れは月世界から入荷した新商品さ」

視線を巡らせると淡青色の睛をした少年が佇んでいた。三日月を模した徽章が襟元で光る。

「夜にそうっと開いてごらん。一日にひとつ、物語がうまれるんだ」


2021/11/24

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