第2話 綺麗な世界
大きな満月が大地を照らし無数の星達が輝く中、一つの光が天から降りてくる
光は丸いコインの様な大きさから大地に近づくにつれ少しずつ大きくなっていく
一面草原の大地にゆっくり着地した光は丸い球体の様な形を次第に崩し、脚や腕、顔など徐々に人間の形を成形していった。
人間の形を成形した者は腕を動かし手を開いたり閉じたりしながら自身の身体を見ている。
「・・・・・・・これが私の身体」
感情が篭っているのかいないのか分からない声で呟いたのは、女神マーテルによって産み落とされた女神アイだった。
-なんか柔らかい
女神アイは自身の身体に付いている大きな膨らみを掴みながら周囲を見渡すと、月夜に照らされた大きな池に気が付いた。
興味を抱いた女神アイは徐々に近づいていく
そして、近づく女神アイの足の指先は池の水に沈んだ
「・・・・・・・冷たい」
感情が乗らない声でそう呟いた女神アイは刺激を受けた箇所に目を遣るため、顔を下に向けた。
目に入ったモノは月夜に照らされた水面に産まれたばかりの姿を映す女神アイだった。
女神アイの瞳には腰まで伸びている白金の長い髪に大きな膨らみを持ったとてもこの世の者ではないくらい美しい女性の姿が映っていた。
暫く水面に映っていた自身の姿を見ていた女神アイだったが同じく水面に映る大きな月に興味を抱き、そして空を見上げた。
「・・・・・・・綺麗」
感情が乏しいものの女神アイは月を掴もうと腕を伸ばした。
そして、大地から足が離れ月に向かって飛んでいく。
離れていく姿を捉えた水面に映る女神アイの背中には先程まで無かった薄く神々しい光を纏った大きな翼が付いていた。
-届かない、掴めない
女神アイは月を目指し空高く舞い上がる。しかし、全く掴める気配がない月を諦めたのか次第に飛ぶ速度は減速しそのまま宙に浮いた。
「・・・・・・・広い。綺麗」
そう呟いた女神アイの眼前には広い世界が広がり目を大きく見開いている。
初めて見た広大な大地に目は釘付けになり次第に速度を上げ腕を広げ大地に沿って飛んでいく。感情はまだ気薄だが少し笑みが溢れ目が輝いている様に見える。
凄い!凄い!広い。
なんか光ってる。人がいる。あそこも光ってる。また人がいる。
女神アイは飛んだ気になるモノを目に焼き付けながら自由に飛んでいく。
目に映るモノ全てが新鮮で心が跳ねる。
高揚していた気持ちが落ち着いたのか女神アイは大海原の空の上で仰向けになり宙に浮いた。
そして、また月を見てゆっくり目を閉じ世界を感じている。
暫くして目を開いた女神アイは仰向けから俯けへと体勢を変え大海原に視線を落とした。
最初は何も感じ無かった女神アイだが何かを見つけたのかずっと同じ方向を見ている。
女神アイの瞳には2つの船が映っていた。
船は寄り添う様に密着し一向に離れようとしない。そして、耳を澄ませば何か耳障りなモノが聞こえ人が慌ただしく動いている。
-何をしているんだろ?
興味を抱いた女神アイは寄り添う船に徐々に近づきその異様な様子の観察を始めた。
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