産まれた女神

第1話 女神の娘

「あなたは何処の神ですか?」



 見覚えのない真っ白な空間の中で優しい声が語りかけてくる

私の目の前には少し腰を低くし微笑んでいる見知らぬ女性がいた。


この人は誰なんだろ?

・・・・・・・私は誰?

自分の事が分からない



 「分かりません」


 「そうですか・・・・・・・では、あなたの御両親は?お父さんお母さんは?何処から来たか分かりますか?」



 半透明の白い魂の様な姿で宙に浮きふわふわ漂っている私に見知らぬ女性が心配そうに見つめている


 私は何か思い出そうと女性の目の前でくるりと一回転したが親の事が頭に思い浮かばない

-思い出せない・・・・・・・お父さん、お母さん誰なんだろう



 「・・・・・・・分かりません。世界を漂流していて・・・・・・・地球という場所に流れ着いたのは分かります」



 私は自分の事なのに何も分からない事に戸惑い困惑し不安を覚えた。

そんな私に女性は腕を伸ばし微笑みながら撫でている



 「それは困りましたね」



 女性はそう言うと顎に軽く手を当て何やら考えているーしばらくするといい事を思いついたのかハッとした表情を浮かべ私を見てニコッと笑った


 「・・・・・・・ねぇ。良かったら私の子供にならない?私ずっと子供が出来なくて欲しかったの」


 「えっ!」



 突然の女性の言葉に私は思わず声が漏れた

そんな驚いた姿を見た女性は手をバタバタ忙しく動かし慌てている


 「急にごめんね。・・・・・・・迷惑なら断って構わないからね」


 「・・・・・・・大丈夫です」


 私は少し考えたが子供になる事に決めた。

お父さんお母さん・・・・・・・自分の事が分からず困惑していた私にとって今凄く嬉しい言葉だった。だから決めた。



 そんな私の言葉に女性は目をキラキラ輝かせている



 「ほんと?いいの?・・・・・・・あー嬉しい、遂に私に子供ができるなんて」



 女性はとても嬉しかったのか大人気なくはしゃいでいる



 「私は女神マーテル・・・・・・・これからはお母さんって呼んでね。

じゃあ・・・・・・・あなたの名前はアイにしましょう。これからはアイと名乗りなさい」


 「・・・・・・・アイ?」


 「そう!・・・・・・・アイ。あなたには愛を知って、これから出会う沢山の人を愛して欲しいの。

だからアイ」



 慈しむ様な表情を浮かべ名前の意味を語る女神マーテルは優しく私を撫でている



 「アイには私が愛している世界に行ってもらいます。新しく女神として産まれて欲しいの。

そして世界を沢山見て愛を知って欲しい。愛して欲しい。産まれたばかりのあなたは感情が気薄になっている事でしょう。でも大丈夫きっとあなたなら愛を見つけられます。・・・・・・・愛を見つけ感情が豊かになったら会いに行きますね」



 子供になったばかりの私を女神マーテルは優しい瞳でずっと見つめている

私はそんな女神マーテルの視線がとても暖かく感じた。



 「・・・・・・・そうだ。アイはまだ身体が出来上がってないみたいだから私の力で作っちゃいましょう。



 女神マーテルは急に楽しそうな表情を浮かべ私の前に手を差し出した。

差し出された手のひらに瓶がいきなり現れ宙に浮いている。女神マーテルは自信満々な様子で半透明の液体が入った瓶を掴み私に見せてくる。



 「じゃーん!!これはね私が作ったお薬なの。飲めばこの世の者とは思えないほど美しくなって、男も女も羨む身体になれるわ・・・・・・・あーきっとモテモテになるわね。私の子供なんだからこれくらいしてあげなくちゃ」



 女神マーテルは目を輝かせ作った薬を私に飲ませている。将来の私の姿を想像しているのだろうか?とても楽しそうだ。



 「私はね想像した物を創造して使う事ができるの・・・・・・・私の神の力ね

そうそう、身体ができるのは世界に産まれてからよ。・・・・・・・そういえば身体が無かったけどアイも神だから何かしら力を持って生まれてるはずよね?

どんな力を持って生まれたの?」



 「・・・・・・・うーん。私も想像したモ・ノ・を創造して使うことできるよ?」



 「あらほんと!?私と同じ力なんて偶然。きっと私の子供になる為に生まれてきたのね」



 女神マーテルは自分と同じ能力を持つ私に運命を感じたのが興奮している

しかし、それも束の間女神マーテルの表情が険しくなった。



 「えっ!悪魔が来たの?・・・・・・・分かった直ぐに戻りますね。」



 険しい表情で独り言を喋る女神マーテルを私は心配になり見つめている。-急にどうしたんだろう。誰もいないのに1人で喋ってる



 「・・・・・・・アイごめんね。私の天使から念話で連絡があって、直ぐに戻らないといけない用事ができてしまったの。もう少しお話がしたかったんだけど。・・・・・・・今からアイを地上に産み落としますね。」



 「大丈夫です。またお母さんに会えるんでしょ?」



 「・・・・・・・えぇ!アイに必ず会いに行きます。」



 女神マーテルは優しく私を撫でた。



 「・・・・・・・でわアイ。私の愛する世界に行って来なさい。そして沢山の人に出会い愛を知り愛されなさい。」



 女神マーテルがそう言うと私の身体は真っ白な空間の底にゆっくりと沈んでいった。

今から世界に産み落とされるかの様に



 「はい!・・・・・・・お母さん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る