女神様は世界を愛してる

ねこ丸

プロローグ

 「いやー!やめて!」


 薄暗い地下室で女性の悲鳴が響き、所々でジャリと音を鳴らす鎖の擦れる音が聞こえる。薄汚れた服を着た数人の若い女性や幼い少女が身を寄せ合い震えていた。



 「・・・・・・・許してください」



 振り絞る様に出した声の女性が見る先には神父の姿をした小太りの男性が鞭を片手に佇んでいる。



 「ダメだ・・・・・・・まだまだお仕置きが足りない」



 神父はそう言うと容赦無く鞭を振るい地下室にはバチン!バチン!っと音が響いた。



 「た、助けて」



 しばかれている女が苦痛の表情を見せる度、神父は笑みを浮かべ優越感に浸っている。



 「何をしているのですか?」



 そう口にしたのはこの世界に産まれた女神の私である。


 突如背後から聞こえた声に驚いた神父は振り返り私を見て硬直している。



 「だ、誰だお前は・・・・・・・どうやって入ってきた」



 驚いていた神父だが私1人しかいないのを見て不敵な笑みを浮かべ私を観察している-いつも思うがこう言う輩は毎回同じ様に私を見る、気持ち悪い。



 「迷い混んで来たのかね?・・・・・・・それにしても美しい、特にその白金の長い髪は素晴らしい」



 白いドレスを身に纏った私を観察しながら神父はそう口にしたが、私は神父の言葉を無視し質問を繰り返した。



 「何をしているのですか?」


 「何って・・・・・・・見れば分かるじゃないですか?遊んでいたんですよ」


 「そうですか。彼女達は全然楽しそうではないですね」



 彼女達はアザを抱き込む様に縮こまり震えている。無数のアザが痛々しく見ていられない

そんな中1人の幼い少女が口を開いた。



 「・・・・・・・神様」


 「まだそんな事を言っているのか!」


 神父は少女の言葉を聞くと態度が一変し次々に口を開いて行く


 「神なんかいない!神なんかいないのだ!何故分からない。私は知った。知ったんだ!

教会に仕えて数十年一度も神なんか見たことがない。どれだけの人が祈りを捧げた。どれだけの人が助けを求めた。神がいつ現れた?私は悟ったのだ」



 「神はいるではないですか」



 「ハハハハハ・・・・・・・何を馬鹿な事言っているのだ!見ろこいつ達を神に祈って助けは来たのか?来るはずないだろ。私は知ってしまったんだ。欲こそが全て、全てなんだ!欲深い者程金を稼ぎ女を買いなんでもできる。神に祈り助けを求める者は搾取されるだけ。何処に神がいると言うんだ!」


 神父は両手を大きく振り上げ豪語している。



 「だから、目の前にいるでわないですか」


 「何を馬鹿な・・・・・・・」


 神父は発した言葉を遮断し硬直した。私の背中に先程まで無かった神々しい大きな翼に視線を送っている。



 「な、なんだ・・・・・・・それは?」



 驚く神父の反応とは別に虐げられてきた女性達から次々に言葉が漏れてくる。



 「女神様」


 「女神様」


 「嘘だーーーーー!違う!違う!違う!ちがーう!」


 神父は女性達の言葉に頭を抱え目の前の現実に目を背け悶えている。



 「何が違うんだ?答えてみろ」



 神父を見る私の表情はとても険しく人間を見る様な目では無かった。私の目を見た神父は息を呑み固まってしまっている


 「何故黙っている?・・・・・・・お前の前にいるのは誰だ?」


 「め・・・・・・・め・・・・・・・」


 「誰だと聞いているんだ」


 重く強い口調に臆したのか神父は喉から言葉が中々出てこない様だ。


 「女神様です」


 「そうだ。女神だ!・・・・・・・お前は神に仕える身で有りながら何をしているんだ?」


 「ち、違うんです女神様・・・・・・・わ、私はこの者達に試練を与え試していたんです」


 膝を床に着け両の手の拳を握り神父は焦りの表情を伺わせながら私に口を開いている。



 「試練?・・・・・・・鞭打つことが何の試練になる?」


 「・・・・・・・それは」


 「なんだ言ってみろ」


 「・・・・・・・・・・・・・・」


 「どうした?分からないのか?・・・・・・・ならお前の言う試練を私がお前に試してやる」



 私の右手には創造した鞭が握られている。腕を振り上げ鞭が神父に向かって振り落とされたーバチン



 「ああぁぁぁあああああ」


 「どうした?何を叫んでいる?・・・・・・・痛いんだろ?どうなんだ?これが試練なのか?」



 私の腕から次々に振り落とされる鞭に神父が叫び悶えている。



 「や、やめてください」


 「お前は止めたのか?この者達はやめてくださいって言わなかったか?どうなんだ?」


 「言いました」


 「言ったんだろ!何故止めなかった?」


 「・・・・・・・・・・・・・・」


 「分からないのか?どうなんだ答えろ」



 神父は答えれないのか唾を呑み言葉が喉から出てこないみたいだ。

 私は呆れた。この神父からは反省の色が見えない



 「お前は赤ちゃんだ。痛みが分からない赤ちゃん。神に仕えながら非道な行いをした其方に痛みを教えてやる。」



 私の口調は重くそして神父に送る視線は鋭く険しい。そして、神父に向かって指を差した。



 「お前は永遠の闇の中老衰で力尽きるその時まで鞭に打たれ続けるがいい」


 「天罰を与えてやる」



 神父の足元には黒い空間の入り口が現れ身体が徐々に沈んでいく。



 「女神様・・・・・・・お許しください・・・・・・・お許しください・・・・・・・お許し・・・・・・・」



 言葉は途中で途切れ神父の姿は闇へと消えていった。

 そして、助かった女性達は胸に手を当て安堵した後、私に手を合わせ祈りを捧げた。


 「女神様」

 

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