第4話
「勇者はまもなく召喚されるでしょう」
そんなカインの一言から話は始まった。勇者が召喚されるとわかってはいたが、すぐに目の前に現れるわけではないが召喚されるという話を聞くと身構えてしまう。心拍数は徐々に上がっていき、手に汗を握るほど緊張をする。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。たまに強くなれないまま時が来て戦いを挑んでくる場合もあります」
カインは俺たちを安心させるために言ったのだろうが今の俺たちにとっては逆効果だ。
だってそれって「たまに」ってことなんでしょ?強い場合の確率の方が高くない?
隣の玲奈を見てみると、同じく不安な表情の顔を向けていた。
深く考える隙もなく話は続く。
「今回勇者召喚を行う国はグランスフィアという国で勇者を強化するための訓練設備が整っているとの情報が入っています」
一体そんな情報をどこから仕入れているのか気になるところだが、今はいいか。
ってかやっぱり強いやつが戦いにくるよねその感じだと。
「グランスフィアとはこれまでに何回か戦っていますが勝ったことはありません」
カインは不気味な笑顔を浮かべていた。
いやそれ聞きたくなかったやつ!
まてよ負けたことあるのに何でこの城あるんだよ。
「どうして負けたことあるのにこの城は残っているのですか」
流石にどうしても気になってしまったので聞いてみた。
「あれ、話してませんでしたっけ。ここでの魔王様と勇者の戦いの勝敗は死だけで決まる訳ではありません。時にはじゃんけんであったり、先程使った魔法がどれだけ飛ばせるかなど勝敗の決め方はいろいろあります。もちろんどちらかの死が勝敗になっていることもありますが」
えーーー、何その制度。怖いんですけど。
ってか何この面白い世界。笑わせに来てるやないか。
でもなんか気が楽になった。
せっかくだからこの世界楽しんでやろうじゃないか。
「そういえば先ほどカケル様にお渡しをしようと思いました前回の魔王様の書物用意できましたのでどうぞ。」
ついに俺も魔法を使える時がきたのか!
俺は期待を胸に書物を開く。そこには詠唱っぽいのと魔法の特徴などが詳しく書かれていた。
「ワレニヒソミシ ヒカリノチカラヨ イマココデサキホコレ フラワリング」
すると部屋中が甘い蜜の香りに包まれ様々な花が咲き誇った。
どの花も美しく、初めて見るものばかりである。これは戦闘向きの魔法ではないな。先代の魔王は女でも口説くためにこの魔法を使っていたのか?
魔法の特徴を読んでみると、そこには
「この花の香りには相手を使役する能力があり、香りを嗅いだものは一定の時間使用者の命令に背くことができない。」
なるほど、この魔法は意外と戦闘に使えそうだな。まだ何か書いてある。
「ただし元々使用者に忠誠を誓っていたものは命令を拒否するが、その代わり使用者に………ベタ惚れする。」
隣を見てみると頬を赤らめた玲奈が熱い視線を向けている。真正面にいるカインもヘニャヘニャになっている。
あ、やべ。説明書は使う前に読まないとなー。今度からはちゃんと読まないといけないなー。
ここで取る選択は2択。1つはこの場を受け入れる。2つ目にこの場から逃げたし、安全な場所まで行く。もちろん俺は後者を選ぶ。
2人ともごめんな。お前らの想いは俺には重すぎる。
目には少量の涙を浮かべ、主人公になったような気分で俺はその部屋を全力で飛び出して走った。
その後正気に戻った2人は効果発動時のことは忘れていた。
「本当に忘れてしまったのか?」
と聞いてみたが、反応はいまいちで話している俺がなんだか変な気分になったので、それ以上追求することはやめた。
高校生だけど異世界で魔王やってます 御野影 未来 @koyo_ri
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