第4話、またメイドですか。。

俺、市倉優希は、姉の代役をやる事になったぜ!こうなったら、や~ってやるぜええ!!

はは……何言ってんだろうな……俺……

てか、そう思わないと、やってらんないしな……はあ……とまあ、そんな訳で、姉の代わりにメイド喫茶「マイ・ドリーム」で働く事になった訳だ。姉貴は部活の合宿で、一週間ぐらいいなくなるみたいだしな?

姉貴が家からいなくなって、次の日。

朝早くに起きた俺は、まず、顔を洗い、学校があるので、制服に着替える。バイトに向かうのは、学校が終わってからでいいだろう……と思っていたので、制服に着替え終わり、朝食を取って、外に出る事にした。外の天気は、雨が降りそうな感じは全くなく、快晴で、ちょっと暑いぐらいだった。あ~学校が終わったら、メイド喫茶に行かなくちゃならんのだよな?

すっげー憂鬱なんだが……。

通学路をひたすら歩き、俺の通っている学校、南高校に辿り着く。自分のクラスの中に入り、早速、親友の真吾に話しかけた。


「おはよう」


「よう、あ、優希、何で、昨日、勝手に帰ったんだ?」


「姉貴に言われて、仕方なくだよ、察してくれよ」


「いや、そう言われてもな……はあ……」


「どうしたんだよ?」


「いや、昨日のお店の中に、俺が気になってた子、呼ぼうとしたんだけど……やって来たのは、金髪縦ロールの子だったんだよな……、結局、最後まで、声をかけられなかったよ……」


「そ、そうか……」

おい、真吾……声をかけて、何を言おうとしてたんだ?


「次にあったら、絶対に声をかけて……それで……ふふふ……」


うわ、キモ……なんか、真吾が、変な含み笑いをしてる。声をかけられなかったって、それって、もしかして……俺の女装した姿だろうな?

うん、絶対にこいつにだけは、バレナイヨウにしとこう……というか、こいつ……もしかして、またあのメイド喫茶、マイ・ドリームにやって来るんじゃないだろうな?そこで女装している俺と鉢合わせになったら、何か嫌なんだが?とりあえず……こいつにだけは、俺の正体をバラす訳にはいかないな……

俺は、そう決心して、真吾と別れて、自分の席に着く。席について、チャイムが鳴ったので、まじめに授業を受ける事にした。

授業内容は、まあ、言っちゃあ何だけど、結構俺は、優等生だったので、すらすらと解く事が出来て、全く問題はなかった。

特に問題と言う事は起こる事もなく、あっと言う間に授業が終わり、放課後。

姉貴に言われてるから、やっぱり行かなくちゃ駄目だよな……もしさぼったら、後で何をされるか、いや、考えるのはよそう。

姉貴が何をしてくるか? ちょっと想像出来ないし……とりあえず俺は、憂鬱な気分で、学校を出る。

そのまま向かうのって、制服姿だから不味いかな? と思ったので、一旦家に戻り、私服に着替えて、家の中でウィッグを付けて、家族に見られるのは嫌だったので、外に出た後、ウィッグを装着、そしてメイド喫茶、マイ・ドリームへと、向かったのであった。

俺は、そこで姉のやっていた、メイドを姉の変わりにやる事になったからである。

うん……ほんと……俺、何してんだろうなあ……そう思いながら、お店、マイ・ドリームに辿り着く。

店の中に入ると、いらっしゃいませ~と言って来たのは、金髪縦ロールのメイドだった。


「あら……もしかして……由紀?」


メイド服を着た金髪縦ロールが聞いてきたので、俺は、姉の声で


「ええ、こんにちは」

え~っと……こいつの名前なんだっけ?

そういや、まだ名前、知らないんだよな……確か


「どうかしたのかしら? 由紀?」


「何でもないわ、じゃあ、着替えてくる」

そう言って、そそくさと俺は、金髪縦ロールから、離れていく事に決めて、移動する。控え室の中に入り、着てる服を脱いで、ロッカーの「市倉由紀」と書かれたのを開けた。

中に入っていたのは、メイド服で、俺は、それに着替える。うん……この格好が慣れたら、怖ええな……とか思いながら、着替え終わると、控え室に、誰か入ってきた。


「こんにちは~、っと、由紀ちゃんだっけ?」


そう言ったのは、あきらかにお子ちゃまサイズの人物。ここの店長らしい、麻衣と呼ばれてる人物だった。


「えっと、店長でいいんだっけ?」


「そうだよぅ~、私、店長の麻衣だよ? え~っと……君が、由紀ちゃんの代役の優希君だっけ?」


「ああ……そうだけど?」


「その声で、男言葉使っちゃ駄目だよ~、由紀りんの代わりなんだから、由紀ちゃんっぽく振舞ってくれなきゃ困るよ~」


そんな事を言われてしまった。てか、由紀りんって何なんだよ?


「はあ……こんな感じでいいかな?」


「うん、だいぶマシになったかな? それにしても……」


「な、なんですか?」


「本当に由紀ちゃんそっくりだね……別人って感じが全くしないんだけど? 本当に凄いよ?」


そう言われても、あまりうれしくないのだが……俺は、愛想笑いをする事にした。


「じゃあ、着替え終わってるみたいだし、ホールに出て、接客をお願いね? 由紀ちゃん」


「はあ……店長は、どうしてるんですか?」


「私は休憩~、この仕事してると、結構肩が凝るのよね~」


そう言われても、幼時体型なので、全く懲りそうに見えないんだが? そう考えていても、意味がないので、俺は、ホールに出て、接客をする事にしたのであった。ホールに行くと、早速声がかかってしまった。一つ言える事は、客が物凄くうざったい……なんせ、男性客しかいないし、しかも俺を呼ぶ時の声が「ユキちゅわーん!」とか、神経を逆なでる感じの声で、呼びやがるからだ。俺は、こいつらうぜえ……滅べば良いのにな? と思いながら、呼ばれたので、男性客の所に行く。 俺を呼んだ客は、何故かスーツ姿だった。いや、こんな店にこんな恰好は似合ってない……あきらかに浮いてる存在だった。会社員か? こいつ……会社終わりにこの店にやって来たのだろうか? 剃り残したのか、無精ひげがちらちらと見えて、結構おっさんじゃないか? こいつ……と顔を見てみると、なかなか渋い感じの顔だった。

とりあえずお客は、お客なので、俺は、こう言う。


「いらっしゃいませ、ご注文は?」

そう聞くと、男はメニューを見た後


「この、魅惑のフルーツパーティと、小悪魔のスパゲッティを頼む」


「かしこまりました、魅惑のフルーツパーティと、小悪魔のスパゲッティですね?」


しかし、メニューの名前が、凄いな?  思いっきり、まともじゃないんだが……魅惑のフルーツパーティとか、小悪魔のスパゲッティって一体どんな品なのか? 全く想像つかないんだがな?


「ああ」


「では、お持ちしてまいりますので、少々お待ち下さい」


そう言って俺は、注文を受け取ったので、厨房に向かった。うん……明らかに普通な感じのメニューじゃないよな……? と思う。

数分後、注文された料理が出来たので、俺は、お盆に載せて、さっきの客の所に向かった。


「お待たせしました、魅惑のフルーツパーティと、小悪魔のスパゲッティになります」

そう言って、テーブルに品物を置くと、男がこう言ってきた。


「この後、暇?」


「はい?」


「このバイトが終わったら、暇か?」

何だ?もしかして……これって、誘ってるのか? 俺のことを?俺は、とりあえず嫌だったので


「いえ、暇ではないです、やる事があるので、申し訳ありませんが」


「そうか……なら、これを渡しとく」


そう言って、なんか名刺見たいのを、お盆の上に置いてきた。


「もしよかったら、連絡してくれ、俺は、いつまでも待ってるから」


「は、はあ……」


そう言っていると、「ユキちゃ~ん」と他の客が呼んだので、俺はそっちに向かう事にした。

貰った名刺は、とりあえずポケットの中に入れとく事にした。そんな感じに時間が進んでいき、店長の麻衣さんが「あがっていいよう~」と言ったので、あがらせて貰う事にした。

控え室に入り、ロッカーを開けて、私服を取り出して、それに着替える。メイド服をロッカーに入れて、仕舞い込んでから、帰る事にした。

控え室から出ると、黒髪の萌が話しかけてきた。


「お姉さま、あがりですか?」


「う、うん」


「そうですか……一緒に帰りたかったのですけど……まだ、時間あるので……それにしてもお姉さま?」


「な、何かな?」


「さっき、男の人に名刺見たいな物貰ってましたよね?」


「そうだけど……」


「絶対に断って下さい! お姉さまにあんな人、似合いません! お姉さまの隣にいるのは、私って思ってるんですから!」


おいおい……それって、決まってるのかよ? と思ったが、今は姉の代わりなので、何とも言えなかった。この子、普通にしてたら、結構いい線行くと思うんだけどな……

この場に長くいると、また何か言われそうなので


「じゃあ、帰るね? さようなら」


「あ、お姉さま……」

そう言って俺は、家へと帰る事にした。

うん、初日でこんなに疲れるなんて、あと六日……俺、大丈夫か……?って、なるんだが……

ま、なんとかなるだろう……と、思う事に決めたのであった。


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