第3話、姉貴、やらなきゃ駄目?

「で……、なんでこの店にいるのかな? 優希」

今現在、俺は何かピンチを迎えている状態なのかも知れない。俺の目の前には、何故か姉貴がいるし。その姉貴が、すっげ~ニコニコ顔でそう言って来る。うん……こりゃ、怒ってないか? と思うんだが……

俺は、正直にこう話す事にした。


「真吾が言ったんだよ、ここで飯を食おうって、それで来たって訳、ほら……いるだろ? あの席に、真吾がさ?」

そう言って、俺は真吾のいる席を指差す。

姉貴は、俺の指した方を見て


「ふ~ん……そう言う事ね……なら納得してあげるわ。けど、なんで真吾君がそう言った訳?」


「実は……」

俺は、姉貴に逆らうのはやばいかな? と思ったので、正直に話すと、姉貴は


「っぷ……それマジ!?っくっくっく」


「わ、笑うなよ!」

姉貴……笑い事ではないんだけどな?

真吾がそう言ったんだぞ? これはマジでな?


「いや~面白い事になってるわね?」


「笑い事じゃないよ……でも、このまま姉貴が、真吾の所に行ったら、何か言って来ると思うぞ? 所謂……告白とか? あの真吾の事だし、絶対に姉貴に何か言って来るんじゃないか?」


「う~ん……それはちょっと嫌ね……そうだわ!」

なんか、姉貴は閃いた様だった。すっげ~嫌な予感がするのは、気のせいか?


「あんた、ちょっと来なさい」


「な、なんだよ? 姉貴、引っ張るなよ!?」

俺は、姉貴に引きずられながらスタッフ、専用口へと案内されてしまった。

そして……


「うん、さすがね? 似合ってるわ? 流石双子よね~」

「本当、似合ってるね~」


今の格好、頭にウィッグを付けられて、 メイド服を着せられた俺がいた。と言うか? 何でウィッグがここにあんだよ! 姉貴が持って来たのか!?そして、俺の他にいるのは、今の俺と同じ姿の姉貴と、ここの店長だと紹介された、一言で言うと……ロリ幼女だった。

俺はとっさに「何で子供が?」と聞くと、あまり痛くない拳で殴られ「私、子供じゃないもん!こう見えても店長なの!怒るよ~?」とか、そのロリ幼女はそう言っている。

怒った姿を見ても、あんまり怖くない、その姿って、特定の人物が見たら「萌え~」とか悶えるんじゃないか?って思うんだが……

見た目がな……完璧に小学生に見える。

ある意味凄いな……

ロリコンとかが好きそうな感じなのだが、俺にはそんな属性はないので、悶えたりはしない、断じてな!!推定身長140ぐらいなのに、大人って言ってやがる。うん……マジで見えなかったので、姉貴に「マジ?」と聞くと「あり得ないと思うけど、あの人、二十歳以上なのよ ?どう見ても、幼女よね~」とか言って来た。それを聞いて、本当にあり得ねえ……と思ってしまった。こんな店で働いていて、本当に大丈夫か?って思ってしまうんだが?

でも、着替えさせられて俺は、こう言ってみる。


「おい……真吾になんて説明すりゃいいんだよ……真吾、俺が遅いから気にしてるんじゃないか?」


「あ、そうね? 優希、携帯貸してね」


「携帯? これで何をって、姉貴!奪い取るなよ!」


姉貴は、俺の携帯を奪い去った後、物凄い速さで打ち込んで、それから


「これでよしっと」

そう言って、俺に携帯を返してくれた。


「一体何したんだ……?」


「ああ、真吾君に「用事ができたから、先、帰る」ってメール送っといたのよ、これで、問題なしね?」


「いやいやいや!問題だろ!? 何で、俺がこんな格好しなくちゃいけないんだ!」


「由紀ちゃんの姿で、俺って言うの……う~ん、なんかかっこいいかも~」

店長と呼ばれたロリ幼女が、そんな事を言っていた。


「まあ、いいじゃない? バイト代出すわよ? 優希、欲しいのあったんでしょ?」

「う……」


確かに俺は今、欲しい物がある。

しかし、何でそれを姉貴が知ってるんだ? と言う事が、謎だった。


「それにね? 私、明日から部活の合宿で、一週間いないのよ、だから優希に、私の代わりをやって貰おうと思ってね?」


「っは? そんな事聞いてないんだけど?」

それ、初耳なんだが? 姉貴の部活……? 

そう言えば、何の部活に入っているか? 全然知らないな?


「うん、言わなかったし」


「何でだよ!」


「別にいっかな~と思っただけよ? 何か文句でも?」


姉貴……その顔は、やばい。人一人殺してるんじゃないか?って殺気は、やめてくれ。


「……いや、ない……って、と言う事は、俺が一週間、姉貴の代わりをって事か?」


「そう言う事になるわね? でさ? 優希、お願いできる?」


「それって強制だろ……? 俺が、断ると言うの思ってないだろ?」


「うん!」

すっげ~いい笑顔で、姉貴がそう言ってきた。

俺は、店長と呼ばれたロリ少女に


「なあ、いいのか? 俺がこんな姿で働いて?」


「う~ん……面白いからOk!それに結構重い荷物もあるから、それを運んで貰おうと思ってるの、やっぱり男手がないと、辛いかな~って思ってるしね? 大丈夫、ばっちし似合ってるよ?」

ビシっとやってきやがった。う、うぜぇ……これは何を言っても、無駄だなと悟ってしまった。


「じゃあ、私は帰るわ、それじゃ後、よろしく~麻衣さん、お願いしますね?」


「りょ~かい」

そう言って、姉貴は本当に帰ってしまった。

どうやら、この店長、麻衣さんって言うみたいだな……でも、俺は心の中では、ロリ幼女って思ってしまう。


「じゃあ、優希君だっけ? 今の姿は、由紀ちゃんだから、ユキちゃんって呼ぶよ?」


「もう好きにしてくれ……」


「なんか嫌そうな顔してるね? なんで?」

そう、真顔で店長が聞いてきた。

こいつ殴ったろうか……と思ったけど、これでも店長らしいので、俺は、姉貴の声で


「何でもないです、気のせいです」


「うわ、ユキちゃんの声だ!びっくり~」


「……なんか、むかつくんですけど?」


「気にしない気にしない、じゃあ、ユキちゃん、仕事頼むよ~? 頑張ってね?」


「はあ、頑張ります……」

こうして俺は、再び、姉としてメイドを、やる事になってしまった。

なんか俺……不幸な気がするのだが……気のせいか?


俺、市倉優希は、又と言うか……

強制的に再び、姉の市倉由紀として、メイドをやる事になってしまった。

うん、俺……何やってんだろうな?

何でこんな事をしなくちゃいけないのだろうか? けど……姉貴には逆らえないし……

そう思っていると


「じゃあ、由紀ちゃん、よろしくね~?」

店長の麻衣さんが、そう言って来る。

改めてみてみると、背が小さすぎるので、全く大人に見えない。下手すれば、小学生に見える。俺は、姉の声で


「はい、分かりました」

そう言って、姉の由紀として、行動する事にして、ホールに出る。ホールに出ると、やっぱりと言うか、店の中には、男性客しかいなかった。よく見てみると、あきらかにオタク? 見たいなやろ~どもがいたりしてる。

俺は、とりあえずメイドなので、呼ばれたら、接客するしかないな……と思う事にして、行動する事にした。そう言えば……俺は、親友の真吾と一緒に来たので、真吾は何やってるんだ? と思い、真吾のいる場所を見てみる。

真吾の相手をしていたのは、金髪縦ロールだった。

確か名前は……あ、そういや名前知らなかったな? 確か、聞いてないし? ま、あの金髪縦ロールに真吾の相手をやってもらった方が、真吾に呼ばれなくて、助かるしな……少なくとも俺は、そう思っていた。


「お姉様……? どうしました?」

そう俺に話しかけたのは、日本人形みたいな姿。黒髪のガチ百合メイドの萌だった。

萌は、姉貴の事を何故か「お姉様」と呼んでいて、どうも慕ってるらしい……

この子結構可愛いのにな? 何で姉貴に惚れてるんだろうか? 何か勿体無い気がするのは気のせいか?俺は、姉の声で


「何でもないわよ、ちょっと考え事をしてただけよ」

そう言う事にした。

すると、萌は


「そうですか……お姉様? 私はもう時間なので、上がりますけど……後は、宜しくお願いしますね? 本当は二人っきりでいたいのですけど……」

なんか、顔を赤らめてそう言って来る。この子めっちゃ可愛いのに、なんか残念だな……と思ってしまった。


「そ、そう……じゃあ、またね?」

俺は、そう言って、萌から離れる。

少なくとも今の俺に、抱き付かれたりすると、別人だってばれそうだからな……

とりあえず、俺は客の相手をする事にした。

結構な時間が過ぎていき、店長が「時間なので、あがっていいよ~」と言ったので、俺は、控え室に入る。

そして、着てるメイド服を脱いで、私服に着替え終わった時、控え室に、金髪縦ロールが入ってきた。


「あら、由紀、貴方……」

今の俺の状態は、男物の服に、ウィッグをつけてる状態だった。これでウィッグを取ったら、完全に男だってバレルンじゃないか? と思ったので、かなりドキドキした。


「な、何か?」

「その格好って、普段からしていますの?」


「う、うん、そうだけど?」

「そう……な、なんかかっこいい……って、私は一体何を言ってるのかしら……ゆ、由紀、今のは忘れて頂戴」


「そ、そう……じゃあ、私は帰るわ、それじゃあ!」


「あ、由紀……」

俺は、素早く控え室から出て行き、マイ・ドリームの外に出る。外に出て、そのまま家に帰る事にした。家に辿り着き、両親が不在で、この姿を見られなくて、本当に良かった。

俺は、自分の部屋に入り、ウィッグを取る。

元の姿に戻り、こう考える。


「一週間って事は、明日も行かなくちゃいけないんだよな……はあ、憂鬱だ……」

そう思いながら、疲れたので、一休みする事にしたのであった。

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